「息子の近く」より夫婦が優先した住まいの条件
和夫さん夫婦が選んだマンションは、息子宅からの距離が以前とほとんど変わりません。それでも、夫婦にとっては「息子の近くに住むこと」より優先したい条件がありました。
車を運転しなくなっても買い物や通院ができること。建物の外回りを自分たちで管理しなくていいこと。そして、室内の移動がワンフロアで済むことです。
総務省『令和5年住宅・土地統計調査 住宅の構造等に関する集計』によると、65歳以上の人がいる世帯の住宅で、「2ヵ所以上の手すり」または「段差のない屋内」のいずれかを満たす「一定のバリアフリー化」がなされている割合は45.0%でした。
美智子さんは、住み替えてから階段を使わない生活になりました。和夫さんも、庭や外壁の状態を気にする必要がなくなったといいます。
一方で、当然ながら費用はかかります。
管理費と修繕積立金は合わせて月約5万円。駐車場は契約せず、車も売却しましたが、必要なときにはタクシーを利用しています。
「お金を払って、自分たちがやらなくていいことを増やした感覚です」
夫婦は、将来介護が必要になった場合まで二人だけで解決しようとは考えていません。介護保険サービスを利用し、それでも生活が難しくなれば高齢者向け住宅への再度の住み替えも検討する予定です。
裕介さんにも、預貯金や保険、マンションの管理会社などの情報を共有しました。緊急時には頼るつもりですが、日常の用事まで子どもに任せないことが夫婦の希望です。
「息子に迷惑をかけたくない、というより、できることは自分たちで選びたいんです。そのために今、お金を使おうと思いました」
高齢期には、以前なら難なくできた家の管理や移動が、少しずつ負担になることがあります。家族の助けを得る方法もあれば、住み替えや外部サービスによって負担そのものを減らす方法もあります。
資産を残すことだけでなく、元気なうちに将来の生活を支える環境へお金を使うことも、老後資金の使い方の一つです。
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