35年の結婚生活に終止符…「一人で生活できるのか」
「離婚した直後は、寂しいというより、これから毎日どうやって生活するんだろうと思いました」
そう話すのは、67歳の修一さん(仮名)です。
2歳年下の元妻とは35年間の結婚生活を経て、1年前に離婚しました。2人の子どもはすでに独立しています。
きっかけは、修一さんの退職後に夫婦で過ごす時間が増えたことでした。
現役時代の修一さんは帰宅が遅く、平日に妻と顔を合わせるのは朝と夜のわずかな時間。休日もゴルフや仕事関係の付き合いで出かけることが少なくありませんでした。
ところが退職後は、朝から晩まで自宅にいます。
「私は昼飯をどうするか聞いただけのつもりでも、妻からしたら『毎日用意しなきゃいけないの?』となる。逆に妻が出かけると聞くと、『何時に帰るの?』と聞いてしまう。そういう小さいことが増えていきました」
ある日、元妻から「これから先もずっと、この生活を続けるのはしんどい」と言われたそうです。
何度か話し合ったものの、最終的には離婚することになりました。
自宅は元妻が住み続け、修一さんは駅から徒歩10分ほどの2DKの賃貸アパートへ転居。家賃は月6万2,000円です。
年金は月約18万円。離婚時には預貯金などの財産も整理しましたが、家賃が発生するため、それまでより毎月の住居費を意識するようになりました。
最初に困ったのは食事でした。
「料理なんてほとんどしたことがなかったんです。最初の1ヵ月くらいは、弁当を買うか、そばを食べに行くか。朝も菓子パンと缶コーヒーで済ませていました」
最初はそれでも困らなかったものの、同じような食事が続くうちに飽きてきました。スーパーで総菜を選んでいると、「毎日これを続けるのもな」と思うようになったといいます。
そこで炊飯器を買い、まずは自分で米を炊くことから始めました。みそ汁や目玉焼きなど、手間のかからないものを覚え、慣れてくると野菜炒めや焼き魚も食卓に並ぶようになりました。
変化があったのは、離婚から半年ほど経ったころでした。
朝7時ごろに目を覚まし、顔を洗ってから湯を沸かす。自分でコーヒーを淹れ、トーストと目玉焼きを用意する。
「ある朝、コーヒーを飲んでいたら、『俺、結構この生活が好きかもしれない』と思ったんです」
誰かに合わせる必要はありません。
7時に食べてもいいし、散歩をしてから9時に食べてもいい。昼食を軽くして、夕方に早めの夕食を取る日もあります。
夫婦で暮らしていたころには意識すらしなかった「自分の時間」が、修一さんの日常になっていきました。
