「今年は何を買おう」…孫の誕生日会に毎年参加していた祖父
「孫が生まれてから、誕生日は毎年一緒に祝っていたんです」
そう話すのは、73歳の俊夫さん(仮名)です。
妻とは5年前に死別。現在は一人暮らしで、月約17万円の年金を受け取っています。
2人いる子どものうち、長男の健太さん(仮名・45歳)は妻と小学4年生の娘の3人暮らし。俊夫さんの自宅から電車で1時間ほどの場所に住んでいます。
孫が幼いころから、誕生日には長男宅へ招かれてきました。
最初のころは、俊夫さんが大きな箱に入ったおもちゃを持っていくと、孫が玄関まで走って迎えに来ました。小学生になってからは本人に欲しいものを聞き、昨年は図鑑を贈ったそうです。
今年も誕生日の2週間ほど前、長男からメッセージが届きました。
「今年も土曜日に誕生日やるけど、来る?」
俊夫さんはすぐに「行くよ」と返信しました。
「一人で暮らしていると、家族で食卓を囲むことなんてほとんどないでしょう。だから、ああいう日は楽しみなんですよ」
当日は午後3時ごろに長男宅へ到着。孫にプレゼントを渡し、夕食には宅配のピザやサラダ、妻が用意した料理が並びました。
食事が終わると、ケーキにろうそくを立てます。孫が火を吹き消す瞬間を俊夫さんもスマートフォンで撮影しました。
その後、長男が「せっかくだから写真撮ろう」と言い、全員で記念写真を撮ることに。スマートフォンを固定し、俊夫さんも長男夫婦と孫の横に並びました。
数枚撮り終えたあと、長男の妻が「今度は3人でも撮ろうか」と声をかけました。長男夫婦と孫の写真です。
俊夫さんは「そうだね」と答え、少し離れた場所から撮影を手伝いました。
特に不自然なことではありません。ところが、その3人が並んでいる姿を見ていたとき、俊夫さんは思いがけず寂しさを感じたといいます。
「当たり前なんですよ。あの3人は一緒に暮らしている家族なんだから。でも、それまで自分も同じ一つの家族みたいな感覚でいたのかもしれません」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上の回答者のうち、子どもが「別居のみ」の人は49.5%。親と成人した子が別々に暮らすことは珍しいことではありません。
俊夫さんも長男一家とは別々に暮らして十数年。それでも妻が亡くなって一人になってからは、長男一家と過ごす時間を以前より楽しみにするようになっていました。
