「あと4日なら何とかなる」冷蔵庫に残っていたもの
「今週、何か食べに行かない?」
長女の美香さん(仮名・47歳)から電話があったものの、父の隆男さん(仮名・75歳)は少し考えてから断りました。
「今週はいいよ。年金が入ったら、また行こう」
隆男さんは妻を6年前に亡くし、一人暮らしをしています。受け取る年金は月額換算で約15万円。住宅ローンを完済したマンションに住み、預貯金は約550万円ありました。
美香さんは、それほど生活に困っているとは思っていませんでした。
しかし実家を訪れると、冷蔵庫にあったのは卵3個、豆腐、納豆、半分残ったキャベツ程度。冷凍庫には食パンが数枚入っていました。
「買い物に行ってないの?」
「金曜日までこれで十分だよ」
隆男さんが待っていたのは年金の支給日でした。
公的年金は原則として偶数月の15日に、前2ヵ月分が支払われます。ただし、15日が土日や祝日の場合は直前の平日に支払われます。
「お金がないなら、言ってくれればいいのに」
美香さんがそう言うと、隆男さんは否定しました。
「ないわけじゃない。貯金を崩したくないだけだよ」
マンションの管理費と修繕積立金は月約3万2,000円。光熱費や通信費が約2万円、通院と薬代に月1万円ほどかかります。さらに固定資産税や家電の買い替えなど、毎月ではない支出にも備えていました。
そのため、隆男さんは2ヵ月分の年金が振り込まれると、最初に固定費や今後必要になるお金を取り分け、残りを食費や日用品に使っていました。
食費の予算は以前とほとんど変えていません。しかし、同じ予算では以前と同じ買い物ができなくなり、肉や魚を買う回数を減らす日が増えていました。
刺身を買う回数を減らし、果物は値段を見て諦める。総菜は値引きされる時間帯に買い、「年金支給日前」になると、家に残っているもので済ませるようになっていました。
総務省『2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年平均』によると、総合指数は前年比3.2%上昇しています。さらに2026年6月も総合指数は前年同月比1.7%の上昇となっており、物価上昇は続いています。
「昔と同じように買っているつもりでも、会計すると高いんだよ。だったら少し我慢しないと」
