住み替えで手に入れた「無理のない老後」
移住から2年後、美紀さんは数日間、両親のマンションに泊まりました。以前は家の手入れに追われていた両親が、自分たちの時間を楽しめるようになっていたことに、美紀さんは驚きました。
朝は近所を散歩し、週に数回スーパーへ買い物へ行く。久美子さんは地域の料理教室、一郎さんは市民農園に通っています。外食は月に数回程度でした。
戸建てのころは休日になると草取りや家の修繕をしていた一郎さんが、今では地域の釣り仲間と出かけるようになりました。久美子さんも、「庭を放っておけないから」と旅行を断ることがなくなったといいます。
マンションの管理費と修繕積立金は月約3万円。固定資産税もかかりますが、庭木の剪定や外壁補修などを個人で手配する必要はなくなりました。
総務省『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、可処分所得が月22万1,544円である一方、消費支出は26万3,979円。平均では毎月の支出が手取り収入を上回っており、住み替え後も住宅費だけでなく、将来の医療や介護に備えた資金管理が必要です。
一郎さん夫婦も、手元に残った1,800万円を「使えるお金」とは考えていません。将来どちらかが一人になった場合の住み替えや、介護費用に備えて残しています。
その一方で、年に2回は旅行へ行くと決め、趣味に使う予算も確保しました。
「前は家を維持するためのお金を気にしていました。今は、自分たちが元気なうちに何に使うかを考えています」
海の見える町への移住は、それだけで理想の老後を約束してくれるものではありません。買い物や医療、交通、住宅の管理費まで確認し、年齢を重ねても続けられる生活かを考えることが重要です。
一郎さん夫婦にとって移住は、時間とお金を、これからの暮らしにどう使うか考え直すきっかけにもなったのです。
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