待合室で繰り広げられる「いつもの光景」
小さな賃貸アパートの一室。壁掛けのカレンダーには、「整形外科」「眼科」「皮膚科」「接骨院」「編み物教室」……通院や習い事など、予定がある日に〇印と、その下にメモが書き込まれています。
坂井久仁子さん(仮名・81歳)は、夫を13年前に亡くし、現在は一人暮らし。子どもは別の県で家庭を築き、頻繁に会うことはできません。
「さて、行きましょうか――」
その日向かったのは、地元の整形外科。昭和の趣があるこじんまりとした病院で、午前9時過ぎに待合室に入ると、すでに多くの患者が集まっていました。リハビリや診察を待つ間、あちこちで小さな会話の輪ができています。
「久仁子さん、身体の調子どう?」
「今日はまた混んでるわねぇ」
久仁子さんは“お仲間”の隣に腰を下ろし、嬉しそうに談笑を始めます。家庭の愚痴やテレビの話題、体のちょっとした不調まで話は尽きません。
診察室に入ると数分間の問診を受け、リハビリ室で電気治療を受けながらスタッフと言葉を交わす。この場所は、久仁子さんにとって体の不調を治す場であると同時に、自分の存在を認識してもらえる空間でもあります。
