(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になって一人暮らしに不安が出てくると、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への住み替えを検討する人もいます。ただし、家族が「これで安心」と考えていても、本人が新しい生活をどう受け止めているかは別の問題です。入居後の暮らしまで具体的に話しておく必要があります。

「安心して暮らしている」と思っていた…家族が知った本音

隆志さんは、母がサ高住を抜け出したのではないかと驚きました。

 

しかし、節子さんが入居した住宅は、本人が自由に外出できる住まいです。認知症のため行動を制限されているわけでもなく、職員に外出を伝えたうえでタクシーを呼んでもらっていました。

 

問題は、節子さんと家族の間で、入居後の生活について認識が大きく違っていたことでした。

 

「週末には顔を出すって言ったでしょう」

 

「毎週行くという意味じゃなかったんだ。電話もしていたじゃないか」

 

「電話だけじゃ寂しいのよ。ここへ来れば、今までみたいに迎えに来てくれると思っていた」

 

隆志さんはそこで初めて、母が入居後の暮らしについて、自分たちとはまったく違うイメージを持っていたことに気づきました。

 

節子さんは食事や設備には不満がありませんでした。ただ、食堂で顔を合わせる人とはまだ会話が続かず、自室で過ごす時間が増えていたといいます。

 

「家にいたときは、スーパーへ行けば知っている人に会えたの。ここでは誰に話しかけていいのか分からない」

 

2025年8月末時点で、サービス付き高齢者向け住宅は全国8,326件、29万444戸が登録されています。高齢期の住まいの選択肢として広がっていますが、建物やサービスの条件だけでなく、入居後にどのような生活を送れるかまで確認することが重要です。

 

隆志さん夫婦はその後、住宅の担当者も交えて節子さんと話し合いました。

 

家族の訪問は月2回を目安にし、来られない週は事前に伝えることにしました。節子さんも館内の体操教室や茶話会に参加し、少しずつ他の入居者と話す機会を増やしています。

 

外出についても禁止するのではなく、行き先と帰宅予定を職員へ伝えることを確認しました。隆志さん宅へ来たいときは、突然タクシーで向かうのではなく、まず電話をするという約束です。

 

「どこかで『これで安心』と思って、母の気持ちを確認しなくなっていました」

 

高齢者向けの住まいへ移ることで、転倒や一人暮らしへの不安を減らせる場合があります。一方、新しい環境に慣れるまでの期間や、家族との交流を本人がどの程度望んでいるかは人によって異なります。住み替えを決める際には、設備や費用だけでなく、家族がどのくらい訪問できるのか、本人が日中をどう過ごすのかまで話し合っておくことが大切です。

 

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