(※写真はイメージです/PIXTA)

年金額が少ない高齢の親が一人で暮らしていると、子どもは生活費や将来の介護費を心配するものです。しかし、年金額だけでは、その人の経済状況は判断できません。預貯金のほか、不動産収入や株式の配当などを得ている場合もあります。ただし、資産からの収入には空室や価格下落といったリスクも伴います。

「毎月34万円」が将来も続くとは限らない

紀子さんは、夫が亡くなった後、不動産管理をすべて任されたといいます。

 

当初は管理会社から届く書類の意味も分からず、家賃がそのまま利益になると思っていました。しかし、外壁の補修に約180万円、給湯器の交換に数十万円かかることを経験し、考えが変わりました。

 

それ以来、毎月の収入の一部を修繕用口座へ移し、確定申告も税理士に依頼しています。

 

国税庁によると、不動産所得は原則として、家賃などの総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などは、不動産収入を得るために直接必要な範囲で経費となります。家賃収入の全額を自由に使えるわけではありません。

 

「年金が少なくても、家賃が入るなら安心じゃない」

 

智恵さんが言うと、紀子さんは首を横に振りました。

 

「今は満室だけど、ずっと続くとは限らないわ。建物も古くなるし、大きな修繕が必要になったら、数年分の利益がなくなることもあるのよ」

 

株式や投資信託についても同様です。配当や分配金は毎月一定ではなく、企業業績や市場環境によって減る可能性があります。金融庁も、株式や投資信託には元本割れのおそれがあるとしたうえで、長期・積立・分散投資の重要性を示しています。

 

また、通常の課税口座で受け取る上場株式などの配当には、原則として所得税・復興特別所得税と住民税を合わせて20.315%が源泉徴収されます。NISA口座では一定の条件のもとで運用益や配当・分配金が非課税になりますが、投資そのものの損失がなくなる制度ではありません。

 

紀子さんは、生活費として使う金額を月18万円程度に抑え、残りは修繕費や将来の介護費として確保していました。年金だけで暮らしているように見えたのは、収入が多くても生活水準を大きく変えなかったためです。

 

智恵さんと弟には、賃貸物件の所在地や管理会社、証券口座、税理士の連絡先をまとめたファイルを渡しました。相続についても、今後専門家を交えて話し合う予定です。

 

総務省『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得は月11万8,465円、消費支出は月14万8,445円でした。平均では、日々の収入だけで支出を賄いきれない状況です。

 

老後の経済状況は、年金額だけで決まるものではありません。ただし、不動産や株式から収入を得ていても、それが将来まで保証されるわけではありません。資産の種類や収入額だけでなく、維持費、税金、価格変動、管理を引き継ぐ人まで整理しておくことが、本人と家族双方の安心につながります。

 

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