(※写真はイメージです/PIXTA)

社会人になり、毎月給料を受け取っている子どもに対して、親が生活費まで細かく尋ねる機会は少ないでしょう。しかし額面の月収だけでは、実際の暮らしぶりは分かりません。家賃や税金、社会保険料、奨学金の返還などを差し引くと、若い会社員でも食費や光熱費を切り詰めざるを得ないことがあります。

「ちゃんと食べている」息子の言葉を信じていたが…

「今度の日曜日、そっちに行ってもいい?」

 

美智子さん(仮名・54歳)が電話で尋ねると、長男の翔太さん(仮名・24歳)は困ったように答えました。

 

「今月は忙しいから、また今度でいいよ」

 

翔太さんは大学卒業後、都内の会社に就職。実家を離れ、東京のワンルームアパートで暮らし始めて2年目になります。

 

月収は額面で約25万円です。正社員として働き、賞与もあると聞いていたため、美智子さんは「ぜいたくはできなくても、普通に暮らせているだろう」と思っていました。

 

ところが、数ヵ月前から電話に出ないことが増えました。連絡がついても、「仕事が忙しい」「ちゃんと食べている」と繰り返すだけです。

 

心配になった美智子さんは、翔太さんの誕生日に合わせ、事前に連絡したうえでアパートを訪ねました。玄関を開けた瞬間、蒸し暑い空気がまとわりつきます。

 

「エアコン、つけてないの?」

 

「電気代がもったいないから。窓を開ければ何とかなるよ」

 

6畳ほどの部屋には、小さな折り畳み机と布団、仕事用の衣類があるだけでした。

 

母が持参した食材を冷蔵庫へ入れようとすると、中には卵、豆腐、調味料しかありませんでした。炊飯器には前日に炊いたというご飯が残っています。

 

「ちゃんと食べているって言ったでしょう」

 

「食べてるよ。ご飯と卵とか、会社でパンを買ったりとか」

 

翔太さんの月収25万円から、税金や社会保険料などが引かれ、手取りは約20万円。家賃と管理費で8万2,000円、光熱費と通信費で約1万8,000円、大学時代に借りた奨学金の返還が月約1万4,000円かかります。

 

さらに、通勤用の衣類や職場の付き合い、日用品などを支払うと、自由に使えるお金は多くありません。入社時の引っ越し代や家具代を分割で支払っており、毎月2万円は急な出費に備えて貯金していました。

 

総務省『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果』によると、単身世帯の1ヵ月当たりの消費支出は17万3,042円でした。年齢や地域による差はありますが、住居費の高い地域で暮らす若者にとって、額面月収25万円は必ずしも余裕のある金額とはいえません。

 

「貯金なんて後でいいじゃない。体を壊したらどうするの」

 

美智子さんが声を荒らげると、翔太さんは黙って机の引き出しから一通の封筒を取り出しました。

 

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