(※写真はイメージです/PIXTA)

離職や離婚、心身の不調などをきっかけに、成人した子どもが実家へ戻ることがあります。親としては、困っている子どもを追い返すことは難しいでしょう。しかし生活費や家事を親が担う状態が長引けば、高齢になった親の暮らしや老後資金にも影響します。家族だからこそ、支援の期限や範囲を決めることが必要です。

「少し休ませてほしい」54歳の息子が戻ってきた日

夕方6時を過ぎると、春子さん(仮名・76歳)は炊飯器を開け、冷めたご飯を確認します。

 

「今日は食べるのかしら」

 

同居する息子の和也さん(仮名・54歳)は、二階の部屋からあまり出てきません。昼過ぎに一度台所へ来るものの、ほとんど会話をしないまま戻っていくのが常です。

 

和也さんが実家へ帰ってきたのは、1年ほど前です。長年勤めた会社で管理職をしていましたが、職場の人間関係に疲れ、退職。その後、再就職が決まらないまま家賃を払えなくなりました。

 

「半年くらい、ここで休ませてほしい」

 

電話でそう言われたとき、春子さんは断れませんでした。夫を亡くしてから一人で暮らしていたため、息子が戻ることへの安心感もあったといいます。

 

春子さんの年金収入は月約14万円。住宅ローンのない戸建てに住み、夫が残したものを含めて預貯金は約3,400万円あります。

 

和也さんには失業給付があり、当初は毎月3万円を生活費として入れていました。しかし、給付が終わると支払いは途絶えます。

 

「今は収入がないから、仕事が決まったらまとめて払う」

 

そう言われ、春子さんは何も言えませんでした。

 

食事や洗濯は次第に春子さんの役目になりました。和也さんは求人サイトを見ていましたが、応募しても不採用が続き、外出する回数も減っていきます。

 

春子さんが「条件を少し広げてみたら」と声をかけると、和也さんは顔を曇らせました。

 

「この年齢で、今までより大幅に給料が下がる仕事をしろっていうのか」

 

息子が怠けているとは思えませんでした。長く働いてきたことも、退職前に疲れ切っていたことも知っています。それでも、食費や光熱費は月に3万円近く増え、自宅の修繕費や将来の介護費用を考えると、不安は消えません。

 

総務省『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得は月11万8,465円である一方、消費支出は14万8,445円。平均では毎月の支出が可処分所得を上回っており、貯蓄があっても取り崩しを前提とする生活になっています。

 

9月17日(木)11:00配信スタート!

 

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