財産を守り切った先に残った、静寂と冷えた惣菜
あれから2年。昭三さんは広い家にポツンと一人。夕食はスーパーの半額シールが貼られた冷めたお惣菜。通帳には相変わらず大金が刻まれていますが、それを使って美味しいものを食べて笑い合う相手はいません。
近所で見かける同年代が、孫と手を繋いで歩いている姿を窓から見るたび、昭三さんの胸はモヤモヤします。
「……電話一本かければ、子どもたちは来てくれるだろうか」
そう思いつつも、余計なプライドと「また金を狙われるのでは」という消えきらない猜疑心が邪魔をして、溜息をつくだけの毎日です。
お金は「守り続けるもの」ではなく「生きる道具」
高齢になると、将来への不安や認知機能の変化などから、お金への執着が強まることがあります。「減らしたくない、誰にも渡したくない」という思いが行き過ぎると、本来守るべき家族との関係まで失ってしまいかねません。
こうした「老後の孤立」は、決して他人事ではありません。厚生労働省「2024年国民生活基礎調査」によると、高齢者世帯のうち一人暮らしの割合は32.7%に達しています。高齢者の単独世帯が増えるなか、家族との関係が希薄になると、体調の変化や認知機能の低下など、小さな異変に気づいてくれる人がいなくなるリスクも高まります。
昭三さんも、8,500万円という資産がありながら、そのお金を使って人生を豊かにすることも、家族との時間を育むこともできていません。財産は守り切れたとしても、気づけば食卓を囲む相手も、気軽に電話をかけられる家族もいなくなってしまったのです。
なお、以前とは明らかに違うお金への執着や被害的な発言、物忘れなどが見られる場合は、認知機能の低下が隠れている可能性もあります。家族だけで抱え込まず、地域包括支援センターなど専門機関に相談することも大切です。
通帳の残高は、人生を豊かにするための手段に過ぎません。棺桶に通帳を持っていくことはできても、その数字をあの世で使うことはできません。
だからこそ、お金を守ることだけに固執するのではなく、生きている今を豊かにし、大切な人との時間のために使うこと。その積み重ねこそが、老後の本当の安心につながるのではないでしょうか。
【関連記事】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
【注目のセミナー情報】
【国内不動産投資】8月8日(土)オンライン開催
《短期償却×安定運用》
実質利回り15%前後も狙える「トランクルーム投資」
【事業投資】8月13日(木)オンライン開催
未経験・1人運営でも目指せる
『買取大吉』の高収益モデルの全貌

