「So What?」でアクションにつなげる
CVC活動に限った話ではないが、私は常に「大局観」を持ち、その実現に向けてどんなアクションを起こすかまで考え、実際に行動に移すことを意識している。
何かしらの構想を描くとき、人はつい、きれいな絵を描こうとする。凝ったプレゼン資料を作り込み、会議で懸命に説明する。だが、私の考えは逆だ。描く絵は6〜7割でいい。プレゼン資料も装飾は不要。シンプルなテキストだけで十分だ。重要なのは、その先にある「何をするか」である。
ヤマハの欧州拠点に在籍していた頃、こんなエピソードがあった。ある会議で、イギリス人メンバーが非常に完成度の高いプレゼン資料を使い、あるプロジェクトの構想を語った。ゴール設定も申し分なく、内容もよく整理されている。しかし、プレゼンが終わった瞬間、私は彼にこう尋ねた。「So What?(それで、何をするの?)」。構想に対して、具体的な行動が語られていなかったのだ。
その後も、私はさまざまな場面で「So What?」と問いかけ続けた。そのうち欧州拠点では、「So What?」ムーブメントが起こった。コンセプトやビジョンを語ったら、必ず「SoWhat?」まで落とし込む。どんな行動につなげるのかをセットで考える文化が根づいていったのである。
大局観やビジョンを抱いたら、規模の大小は問わず、とにかく行動に移す。これがアクションファーストの大原則だ。
アクションファーストを徹底すれば、途中で判断を修正する場面は必ず訪れる。しかしそれは後退ではない。成功に向けた前向きな方針転換である。前提となる大局観が共有されていれば、「なぜ修正が必要なのか」は自然と周囲に理解される。
実際、私自身もCVC活動を開始してから、幾度となく判断を修正してきた。立ち上げ当初、「1000社のスタートアップと面談する」という目標を掲げていたが、動き始めるなかで、数を追うこと自体が成果につながらないと気づいた。そこで方針をあらため、自社アセットの洗い出しに軸足を移した。
また当初は、シリコンバレーで目にする非連続成長の事例に影響され、Sphere型シアターやアバターコンサートなど、実現までの距離が遠いテーマに意識が向いていた。しかし、TuneForteとの協業を通じて短期的な成果を生むことの重要性を実感し、「既存顧客×既存商材」領域に注力する方針へと切り替えた。
多くの場合、人は一度定めた戦略に強く執着してしまう。途中で違和感を覚えても、「ここまで考えたのだから」「今さら変えられない」という心理が働き、方向転換をためらってしまう。しかしCVC活動において重要なのは、〝戦略の正しさ〟を守ることではない。協業や投資を成功させて成果を出すことそのものである。
目指すべきゴールが明確であれば、そこに至る手段は状況に応じて変えていい。誤りに気づいた時点で修正し、次の一手を打つ。そのスピードこそが、価値を生むのである。
杉野 Scott 祐介
Yamaha Music Innovations
President&CEO
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