シリコンバレーに存在するといわれる「インナーサークル」の正体
シリコンバレーで成果を出すためには、そのスピードに乗り遅れないよう、とにかく動く「アクションファーストの法則」が絶対である。しかし、このアクションも、正しい方向へ向けて放たれなければ十分な成果を得られない。どれだけ速く走っても、向かうべき相手を間違えればその努力は報われない。
ここでいう「向かうべき方向」とは、シリコンバレーに存在するとされる閉じたネットワーク、いわゆる〝インナーサークル〟だ。
インナーサークルとは、大きな集団の中で、情報や影響力を共有する少人数からなる集団のことを指す。シリコンバレーで成功するには、このインナーサークルにアクセスできるかどうかが成否を分けるといわれている。
元デロイト・トーマツ・ベンチャーサポート取締役COO/シリコンバレー事務所パートナーの木村将まさ之ゆき氏の著書『スタートアップ協業を成功させるBMW発の新手法 ベンチャークライアント』(日経BP)では、インナーサークルについて触れた次のような一節がある。
木村氏の言葉のとおり、インナーサークルは「クラブ」のように閉じており、通常の企業や、駐在員として派遣されてきた日本企業のCVCが簡単に入り込める場所ではない。
Counterpart Ventures の西条氏によると、シリコンバレーの投資家・スタートアップの関係は、分かりやすくいえば3層のピラミッド構造になっているという。上層の〝インナーサークルの核〟にいるのが、セコイア・キャピタルやアンドリーセン・ホロウィッツなどトップレベルのVCだ。この層に入るスタートアップは、例えば、元ビッグテックの経営層が立ち上げた会社で、すでに複数回の調達をさせているなど、「勝ちが見えている」と評される企業ばかりだ。こうしたスタートアップは、私たちがその存在に気づく前からすでに投資家が決まっていることが多い。トップVCが長年の信頼関係や過去の成功実績を基に囲い込んでいるため、外部のVCやCVCが入る余地は極めて小さい。私たちのような一般的なCVCが上層に挑むには、世界トップレベルの投資家と関係性を構築するなどしない限り、ほぼ不可能である。
中層には、トップ層ほどの影響力はないが堅実に成長している良質なVC、一定の投資実績を持つCVC、そして伸びしろが見込めるスタートアップが集まる。この層の投資家・スタートアップは、インナーサークルへのアクセス権をかけて日々しのぎを削っている。ここにこそ、日本企業CVCが入り込む現実的な入り口があるといえる。
そしてピラミッドの下層には、投資実績が乏しいVC、CVC、資金調達に苦労するスタートアップが位置する。専業VCであれば結果が伴わなければ倒産につながるし、CVCであっても成果が出なければ数年で撤退となる可能性がある。
私を含め、多くの日本企業のCVC担当者は、本職の投資家ではない。異動によって投資部門に配属された、いわば「辞令投資家」だ。本物のVCのように投資経験を積み上げてきたわけではないため、地力で勝負をしても太刀打ちできない。だからこそ重要なのは、「どの層とつながるか」「誰を水先案内人にするか」「どこから信頼を積み上げていくか」という方向の精度なのである。


