シリコンバレーには世界中のスタートアップや投資家が集まり、多くの日本企業もCVCを設立して新規事業の創出を目指しています。しかし、思うような成果を上げられず、撤退や縮小を余儀なくされる企業も少なくありません。その背景には、日本企業ならではの課題と、シリコンバレー特有のエコシステムの存在があります。本記事では杉野Scott祐介氏による書籍『アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集しヤマハの現地法人CEOが、自身の経験をもとに、現地で重要視される信頼のネットワークの実態を解説します。
「成果が出せない」日本企業のCVCが抱える課題とは
世界最高峰のエコシステムに参入し、新規事業創出と持続的な成長のタネを見つけたいと考えるのは、日本企業のCVCも同様だ。現地に拠点を設け、スタートアップとの協業や投資の機会をうかがっている。
楽器製造を主軸に、音響機器、音響関連サービスなどを展開するヤマハもそのうちの一社だ。
2024年4月、ヤマハは音・音楽の領域を中心にグローバルなオープンイノベーションを強化するため、シリコンバレーに事業開発拠点「Yamaha Music Innovations」(以下、YMI)を立ち上げた。
私は現在、そのCEOを務めている。成熟した音楽産業において、従来どおりのやり方では事業成長は見込めない。私に課された任務は、スタートアップ企業とのイノベーション機会を探り、ヤマハの最大の目的である非連続成長につなげることである。
結果、YMIは参入わずか1年半で10件を超える協業を実現した。2025年1月には駐在員事務所を法人化し、正式にCVCファンドを設立。5月から自社ファンドとして本格的な投資活動を開始している。
シリコンバレーには何百社もの日本企業のCVCが進出しているが、そのすべてが望んだ成果を出せているわけではない。
成功事例よりも失敗事例のほうが目につくどころか、「日本企業は情報収集をするだけだ」「決断が遅く、話しても前に進まない」などの悪評を耳にすることが多い。
実際にこの悪評を裏付けるように、私がシリコンバレーに赴任してからわずか1年半の間に、いくつもの日本企業がCVCの規模を縮小したり、撤退したりする例を目の当たりにしてきた。
もちろん、それらの企業が自ら「撤退しました」などとリリースしてこそいないが、私の肌感覚としてもその数は30社を優に超えている。
そんな環境下で、YMIが短期間で成果を出せた要因について、シリコンバレーに拠点を構える日本企業のCVCからはさまざまな質問が寄せられる。
考察を重ねた結果、私は日本企業のCVCが抱えるいくつかの課題に気がついた。その一つが、現地のエコシステムに入り込むことの難易度の高さである。
Yamaha Music Innovations
President&CEO
1986年生まれ。2008年、早稲田大学国際教養学部卒業後、ヤマハ株式会社に入社。半導体B to B営業に従事し、AppleやGoogleなど世界的IT企業との取引を担当。白黒が明確な大型案件を数多く手掛け、20億円規模の売上獲得にも成功。その後、神戸大学MBAを修了し、30歳で異例のスピード昇進を果たす。2017年より本社経営企画部にて中期経営計画策定、ガバナンス強化、取締役会運営を担当。2020年からは欧州地域の統括拠点であるヤマハ・ミュージック・ヨーロッパ社に赴任し、欧州地域管理責任者として現地CEOとともに企業戦略・組織改革・財務課題の解決に取り組み、成果を上げた。
2024年、ヤマハのシリコンバレー拠点「Yamaha Music Innovations」President&CEOに就任。スタートアップとの協業・投資・M&Aを推進し、AIカメラ(TuneForte)、アフリカ市場開拓(Audiomack)、特許分析効率化(DataFalcon)など複数のプロジェクトを短期間で実現。2025年には法人化と5000万ドル規模の自社ファンド設立を主導し、世界の音楽・音響分野に新たな価値を創出している。
2026年1月、「Billboard 2026 Finance 50 list(業界の有力な投資家ランキング)」に選出。「アクションファースト」を信条に、現場でともに汗をかく姿勢でスタートアップと信頼を築き、短期成果と長期戦略を両立させる日本企業CVCの新しい成功モデルを体現している。
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連載GGO>記事>連載>アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論