(※写真はイメージです/PIXTA)

最先端の技術やアイデアが集まる、世界屈指のイノベーション中心地・シリコンバレー。今日では多くの日本企業もまた、新たな事業機会を求めシリコンバレーに進出しています。しかし、著者が現地でのCVC活動を通じて痛感したのは、遠く離れた本社の信頼を勝ち獲ることの重要性でした。本記事では杉野Scott祐介氏による書籍『アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集し、ヤマハの現地法人CEOが、海外CVC活動の成否を左右する「本社内営業」の重要性と、共に挑戦する「仲間」を増やすための戦略について、自身の経験をもとに解説します。 

海外におけるCVC活動の「本丸」は社内説得にあり

シリコンバレーでCVC活動を進めて痛感するのは、協業や投資の成否を分ける最大の要因は、実は外ではなく「内」にあるという事実である。どれだけ業界トップの投資家を味方につけ、優れたスタートアップを見つけたとしても、その価値を本社が理解し、支援体制を整えてくれなければ成果は生まれない。

 

海外拠点の活動は、本社からは見えづらい。物理的にも心理的にも距離があるうえ、スタートアップとの協業や投資といった取り組みは、日常業務とはかけ離れているように思われがちだ。その結果、活動の価値が十分に理解されず、多くの社員にとって、CVC拠点は「何をしているか分からない部署」に映ってしまう。そうなれば、予算要求や協業提案が通りにくくなるのも無理はない。

 

こうした「活動の見えづらさ」は、海外駐在に特有の構造的な問題でもある。海外駐在員は、社内では特殊なポジションに見られやすく、ともすれば、「キラキラした仕事をしている」「華やかな生活をしている」というイメージが先行しがちだ。しかし実態は、地味な作業と泥臭い営業活動、そして信頼関係を築くための地道なコミュニケーションの積み重ねである。海外でのCVC活動を成果につなげるためには、本社側が海外駐在に抱く「イメージ」と「現実」との間に存在するギャップを埋め、同じ地平で物事を見てもらう必要がある。

 

そのため欠かせないのが、短期的に目に見える成果を示すことだ。まずは「海外拠点に任せれば、課題解決が前に進む」という信頼を獲得するところから始めなければならない。協業によるコスト削減や業務効率化など、数字で説明できる成果を積み上げることで、本社からの信頼と支援は自然と引き出されていく。この「短期成果→信頼獲得→裁量拡大」の循環を作り出すことができなければ、CVC拠点の存在感は次第に薄れ、やがて組織のなかで宙に浮いた存在になってしまうのである。

 

そして、成果を上げたらそれを社内に向けて発信することだ。どれだけ優れたスタートアップの協業案件を持ち帰っても、それにどんな価値があるか、自分たちの部署にどう関係があるかを腹落ちしてもらわなければ、本当の意味での理解にはつながらない。「活動が見えない」「価値が分からない」といった本社側の感覚は、放置すればするほど強まっていく。だからこそ、見えづらい部分を言語化し、丁寧に伝え続ける社内コミュニケーションが不可欠なのである。

 

次ページ現場社員に向けた「社内営業」の成果

※本連載は、杉野Scott祐介氏による書籍『アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論

アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論

杉野 Scott 祐介

幻冬舎メディアコンサルティング

世界屈指のイノベーション中心地であるシリコンバレーには、スタートアップ、投資家、そして世界的大企業が集まり、技術・資金・人材が絶えず交差することで、新たなビジネスが次々と生み出されています。 本書の著者は、楽…

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