月31万円が「そのまま生活費」にはならない理由
築30年を超えたアパートは、維持するだけでもお金がかかります。
前年には屋根と外壁の補修が重なり、約180万円を支出しました。入居者が退去すれば原状回復費用も必要です。固定資産税や火災保険料もあります。
「家賃が入ったからって、全部使ったら大変よ。次にどこが壊れるかわからないもの」
芳江さんは家賃収入の一部を専用口座に残し、修繕などに備えていました。
株式についても、短期売買で利益を得ているわけではありません。
「お父さんがいたころから持っているものがほとんど。配当が入ったらありがたく使わせてもらうくらいよ」
和也さんは、母の生活費を心配する必要がなかったことには安心しました。一方で、書類を見ているうちに別の問題に気づきます。
管理会社とのやり取り、修繕の判断、確定申告、金融機関から届く書類――。77歳の母が、それらを一人で管理していたのです。
「これ、ずっと一人でやってたの?」
「お父さんが亡くなってからはね。でも最近は面倒になってきたわ」
これまで和也さんは、「母の年金は月8万円」という数字を聞いて、生活費の不足を心配していました。ところが実際に考えるべきだったのは、母が持つ資産と収入を今後誰が管理するのかという問題でした。
不動産所得がある場合、家賃収入から必要経費を差し引いて所得を計算します。また、不動産や株式などは、将来的に相続財産となる可能性があります。
そこで親子は、アパートの登記や管理会社との契約書、修繕履歴、金融商品の一覧などを一緒に整理することにしました。確定申告についても、今後一人での対応が難しくなれば税理士への依頼を検討する予定です。
芳江さんは、すぐにアパートや株式を手放すつもりはありません。
「お父さんと二人で残してきたものだから、元気なうちは私が見ていたい」
和也さんも、その気持ちを尊重することにしました。
親の経済状況は、年金額だけでは判断できません。和也さんも母に家賃収入があることは知っていました。それでも、具体的な収入額や保有する金融資産までは知りませんでした。
親が元気なうちに確認しておきたいのは、預貯金の残高だけではありません。どのような資産から収入を得ていて、どんな支出があり、将来誰が管理するのか。芳江さん親子にとって今回の出来事は、それまで曖昧だった「親のお金」を具体的に話すきっかけになったのでした。
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