法律上の「保証」とは、なにを意味するのか
Aさんが最初に問題にしたのは、「30年間家賃保証という説明と違うのではないか」という点だった。
しかしサブリース契約では、「30年間、契約が継続すること」と「30年間、同じ賃料が維持されること」は必ずしも同じ意味ではない。
多くのサブリース契約には、以下のような事情に応じて賃料を見直す条項があらかじめ組み込まれているからだ。
・経済状況の変化
・周辺賃料相場の変動
・物件状況の変化
契約書上、賃料改定の可能性が定められている場合には、「保証」という言葉だけで将来の賃料額が固定されるとは限らない。
最高裁判例が示した考え方「減額の可否は事情を総合判断する」
サブリース契約の賃料減額については、最高裁でも争われた事例がある(最高裁平成15年10月23日判決)。
この事案では、建物所有者とサブリース会社とのあいだで、一定期間の賃料保証を内容とする契約が締結されていた。その後、賃料相場の変化などを理由として、サブリース会社が賃料減額を求めた。
最高裁は、サブリース契約も建物賃貸借契約である以上、借地借家法第32条の適用があり、同条の定める賃料減額請求の対象になると判断した。その一方で、単純に周辺相場だけで判断するのではなく、
・賃料保証特約が存在したこと
・保証賃料額が決定された経緯
なども考慮すべきであると示した。つまり、「サブリース会社だから自由に減額できる」
というものでもなければ、「30年保証だから絶対に減額されない」というものでもない。契約の内容と、その契約が成立した背景を踏まえて判断されることになるのだ。
事件の顛末…契約内容を確認したうえで一定の減額に応じる
この最高裁判例をもとに、Aさんの事件についても慎重に判断していくことになった。まずは以下の資料や事実関係を確認していく。
・サブリース契約書の賃料改定条項
・購入時の説明内容
・収支シミュレーションの前提
・減額理由の合理性
資料を検証した結果、サブリース会社による賃料見直し請求そのものを完全に拒絶することは法的に難しい状況であった。
ただ、購入時の担当者の説明や投資判断の前提も踏まえると、提示された「20%」という減額幅をそのまま受け入れるのではなく、交渉の余地がある。交渉の結果、減額幅を約5%に留める形で合意に達した。
当初の提示より圧縮できたことで、収支上の利益を確保できるようになり、Aさんは無事にアパート投資を継続できることとなった。
Aさんはこう振り返る。
「30年間同じ家賃が続くと思い込んでいました。契約書を見るだけではなく、説明内容との違いも確認することが大事だとわかりました」
サブリース契約検討時のチェックポイント
不動産投資では、「家賃保証」「空室リスクなし」「安定収入」という魅力的な言葉が飛び交う。しかし、そんな「うまい話」を耳にした際、必ず確認すべきは、「なにが、どの条件で保証されているのか」である。
具体的には、サブリース契約を検討する場合、以下のポイントを確認しなければならない。
・賃料改定条項の内容
・減額できる条件
・見直し時期
・契約解除条件
・購入時の説明内容
不動産投資のリスクは、空室や価格下落だけではない。契約書に書かれた条件を正しく理解し、自分の投資計画にどのような影響があるのかを把握することこそ、資産を守る第一歩になる。
松井 竜介
陽なた法律事務所 代表弁護士
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