庭も5LDKもない。それでも「こっちのほうが楽だった」
修一さんが住み替え先として選んだのは、駅から徒歩10分ほどの場所にある賃貸団地でした。比較的新しい棟の2DKで、エレベーター付き。スーパーやドラッグストアも歩いて行けます。
初めて内見したとき、修一さんは部屋の狭さに戸惑いました。
「ここに今までの荷物が全部入るのか?」
当然、入りません。
引っ越しまでの数ヵ月で、家具や衣類、食器を大量に処分しました。妻が使っていたものを手放すときには迷いもありましたが、子どもたちと相談し、写真や思い入れのある品だけを残しました。
戸建ては売却し、その資金の一部は今後の生活費や住み替えに備えて手元に残しました。
団地へ移って最初に感じたのは、「何もしなくていい時間が増えたこと」だったといいます。
「雨が降っても庭を気にしなくていい。台風のあとに屋根を見上げることもない。掃除もすぐ終わります」
周囲には修一さんと同年代か、それ以上の住民も多く暮らしています。朝になると散歩へ出る人がおり、ベンチで話をしている住民の姿も見かけます。
一方、集合住宅ならではの生活音や、近隣との距離の近さには慣れが必要でした。それでも、修一さんは以前の戸建てに戻りたいとは考えていません。
国土交通省が2026年3月に閣議決定した『住生活基本計画(全国計画)』でも、高齢者が自立して暮らせる住生活の実現が政策目標の一つに掲げられています。高齢期の住宅では、広さだけでなく、移動しやすさや生活支援、地域とのつながりを含めた住環境が重要になります。
「庭もなくなったし、5LDKから2DKです。でも、一人ならこれで十分でした。広い家を維持することに、ずいぶん時間とお金を使っていたんだなと思います」
老後の住まいに必要な広さや設備は、家族構成や年齢によって変わります。持ち家を手放して小さな住まいへ移ることにも、当然メリットとデメリットがあります。今の住宅にかかる維持費や手間、将来の移動のしやすさまで含め、自分が無理なく暮らし続けられる住まいを考えることが大切です。
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