【7月の金市場】6月は“短期的な逆風”も、コロナ禍以降続く“長期的な追い風”に変化なし…世界の中央銀行の戦略的買いが「5,000ドル突破」のカギに
(※画像はイメージです/PIXTA)
6月の金市場はドル高や利下げ期待の後退で短期的な逆風となり、金ETFから53億ドルが流出し、価格も11.7%下落しました。一方で、世界の債務膨張、中国・新興国の強い実需、株式と債券の高い相関など、コロナ禍以降の長期的な追い風に変化はありません。本稿では、金価格を左右する主要要因を整理するとともに、7月の金相場と今後の見通しをみていきましょう。※なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの4名のストラテジストによる共同執筆です。
米国債の買い手は海外→国内へ…「金保有」の戦略的意義高まる
米国債を買う海外投資家が減っている
米国債の総保有高に占める海外投資家の比率は、2010年の約50%から2025年には約31%に低下しました。一方、FRBのシステム公開市場勘定(SOMA)による保有比率は、2021年の約25%をピークに、2025年12月1日の正式なバランスシート縮小(QT=量的引き締め)終了後に約13%まで低下しました※23。
これは、実際になにを意味するのでしょうか。米国債の限界的な買い手が、より価格に敏感な投資家へと移行しているということです。具体的には、マネー・マーケット・ミューチュアル・ファンド(MMMF)、銀行、ETF、ヘッジファンド、個人投資家などです。
つまり、米国の投資家がQT終了後に米国債の供給を吸収していますが、その代償として、より高い利回りが必要になっているのです。第2次トランプ政権下で見られるように、海外の公的部門の米国債に対する需要の後退は、準備資産やドル資産を乗り替える手段として金の戦略的な保有を促す可能性があります。
高まる金の存在感
そうした準備資産の変化は、金に一段と明確に表れています。金価格は2010〜2026年の間に3倍となり、欧州中央銀行(ECB)は2025年末時点で金が世界の公式準備高の27%に達し、米国債の22%を史上初めて上回ったと推計しています※24。
中央銀行による金の購入は2022年以降、年平均約1,000トンに達しており※25、金準備を積み増す中央銀行の確信度は過去最高水準まで高まっています※26。こうした準備資産のローテーションは構造的である可能性があり、機関投資家のポートフォリオにおける金保有の戦略的意義を高めます。
FRB議長はインフレ警戒姿勢…利下げは当面期待できず
6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのウォーシュ議長による強いインフレ警戒メッセージは、FRBとして情報発信を減らしたいとの意向表明とともに、原油価格の下落(北半球が夏の需要期に入っているにもかかわらずイラン紛争前の水準まで戻っている)によるディスインフレのシグナルを上回る影響を与えているように見えます。
エネルギー価格の下落が第3四半期のインフレ圧力を後退させ、米国債利回り曲線の適度なブル・スティープ化が起きれば、FRBは政策金利の据え置きに落ち着く可能性があります。
明確にいえば、大きな経済ショックがない限り、再び利下げが実施される可能性は低いでしょう。一方、金投資家にとっては、利上げが選択肢から外れることが大きな追い風となり得ます。前述のとおり、短期金利市場ではトレーダーが、今後100日以内の少なくとも0.25%の利上げを積極的に織り込んでいます※27。
とはいえ、2年物米国債の利回りで4.20〜4.25%という水準は、タカ派姿勢がピークにあることを示している可能性があります。当社は、2年債利回りが3.75%程度まで低下するような展開になれば、金価格は1オンス当たり5,000ドルに向けて上昇が加速すると考えています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。
Aakash Doshi(Head of Gold Strategy)、Mohamad Abukhalaf (Gold Strategist)、Diego Andrade(Senior Gold Strategist)、アーロン・チャン(ゴールド・ストラテジスト)
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ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、約半世紀にわたり、機関投資家、金融プロフェッショナル、そして個人投資家に、より良い成果をもたらしてきた。
インデックス運用やETF(上場投資信託)分野における早期からの取り組みを含め、同社の投資手法は、市場に裏付けられた運用ノウハウと、投資家ニーズへの継続的な対応を基盤としている。
2025年6月末時点において、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが関与する運用資産残高は5兆米ドルを超えており、60カ国以上の顧客に対してサービスを展開している。その中には、グローバル規模での戦略的パートナーシップを通じた提供も含まれ、コスト効率に優れた幅広い投資手段を提供している。ETFの運用資産総額1兆6,898.3億米ドルを含み、そのうち約1,160.5億米ドルは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ・ファンズ・ディストリビューターズ・エルエルシー(「SSGA FD」)がマーケティング・エージェントを行っているSPDRの金の資産となっている。SSGA FDはSSGAの関連会社で、すべての運用資産残高は監査前の数値。
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本稿に示されている見解は2026年6月30日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
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〈注記〉
※1 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※2 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※3 Source:ICE, State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※4 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※5 Source:Bloomberg Finance L.P., as of 06/30/2026
※6 Source:IIF, State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※7 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※8 Source:China Customs, LBMA, SGE, State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※9 Source:Morningstar, State Street Investment Management, as of 05/31/2026
※10 Source:World Gold Council, State Street Investment Management, as of 06/27/2026
※11 Source:World Gold Council, State Street Investment Management, as of 06/27/2026
※12 Source:China Customs, State Street Investment Management, as of 05/31/2026
※13 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※14 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※15 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※16 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※17 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※18 Source:Bloomberg Finance L.P., as of 06/30/2026
※19 Source:World Gold Council Global Demand Trends: Q1 2026, as of 04/29/2026
※20 Source:World Gold Council, as of 06/03/2026
※21 Source:World Gold Council, as of 06/12/2026
※22 Source:State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※23 Source:Federal Reserve Z.1, U.S. Treasury TIC, Bloomberg Finance L.P., and State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※24 Source:European Central Bank: The international role of the euro, as of 06/30/2026
※25 Source:World Gold Council Global Demand Trends: Q1 2026, as of 04/29/2026
※26 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※27 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
〈出所〉
★1 出所:ブルームバーグ・ファイナンス L.P.、ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年6月27日時点。記載されているパフォーマンスデータは過去のパフォーマンスです。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
★2 出所:ユーガブ、ワールド ゴールド カウンシル、中央銀行金準備サーベイ2026、2026年6月時点。
★3 出所:FRB 資金循環統計(Z.1)、米財務省 国際資本統計(TIC)、ブルームバーグ・フィナンシャル L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年3月30日時点
〈用語集〉
用語集
・中央銀行:一つの国または国家連合で用いられる通貨と信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関
・COMEX:コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場
・金のスポット価格:スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
・実質金利:インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。
・ICEブレント:インターコンチネンタル取引所(ICE)で取引されるブレント原油先物で、国際的に取引される原油の主要なベンチマーク価格の一つです。
・レフトテール・ヘッジ:株式急落、政策ショック、通貨の不安定化など、極端に悪い市場結果(下振れ)からポートフォリオを守るためのポジション。金は、市場全体におよぶストレス局面における過去のパフォーマンスから、レフトテール・ヘッジとして位置づけられることが多いです。
・30日移動平均ボラティリティ:資産の過去30日間のリターンの年率換算標準偏差を測定、変動するリスクを示すため毎日更新されます。価格変動の激しさを定量し、値が高いほどリスクが大きいことを示します。
・ディベースメント(通貨価値の切り下げ):通常、インフレ、過剰な通貨発行、あるいは時間の経過とともに通貨の価値を弱める政策によって引き起こされる、通貨の実質価値または購買力の低下を指します。
・タカ派的な政策転換:中央銀行や政策当局のメッセージが金融引き締め方向へとシフトすることで、通常、政策金利の引き上げ、利下げ幅の縮小、あるいはインフレ抑制の強化を示唆します。
・代替不換通貨:主要な準備通貨(特に米ドル)の代替として使用される、非伝統的な不換通貨を指します。
・国際金融協会(IIF):銀行、資産運用会社、保険会社、政府系ファンド、ヘッジファンド、中央銀行やその他世界の金融機関を代表する国際的な金融業界団体です。IIFは各国政府、家計、企業、金融機関の債務水準を追跡する「グローバル債務モニター」で広く知られています。