【7月の金市場】6月は“短期的な逆風”も、コロナ禍以降続く“長期的な追い風”に変化なし…世界の中央銀行の戦略的買いが「5,000ドル突破」のカギに
(※画像はイメージです/PIXTA)
6月の金市場はドル高や利下げ期待の後退で短期的な逆風となり、金ETFから53億ドルが流出し、価格も11.7%下落しました。一方で、世界の債務膨張、中国・新興国の強い実需、株式と債券の高い相関など、コロナ禍以降の長期的な追い風に変化はありません。本稿では、金価格を左右する主要要因を整理するとともに、7月の金相場と今後の見通しをみていきましょう。※なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの4名のストラテジストによる共同執筆です。
中銀による買いが4,000ドルの下支えと5,000ドルへのカギに
世界の中央銀行の89%が「今後1年で金保有が増える」と回答
76ヵ国の中央銀行を対象とした大規模なサンプリングに基づく、2026年WGC金準備サーベイによれば、公的部門は引き続き金の積み増しに前向きであることが示されています※13。
回答の89%は今後12ヵ月で世界の中央銀行の金準備高が増加すると予想しており、過去最高の45%が自身の金準備高も同期間に増えると回答しています。減少を予想しているのは、1%にすぎません※14。長期的には、84%が今後5年間で金が外貨準備全体に占める割合は高まると予想し、準備資産における戦略的な資産配分の対象として、金の役割が高まっています※15。
また、米ドルに対する前向きな見解は後退しており、回答の74%は今後5年間で世界の外貨準備における米ドルの保有高は減少すると予想しています※16。この準備資産を分散するという変化は、地政学的な分断の進行という観点から語られることが増えています。
ある中央銀行は、「米ドルが外貨準備全体に占める割合は低下すると予想している。この減少は主に、米国の外交政策や政治の影響を受けやすい国々で起こるだろう」と回答しています※17。これは、世界の外貨準備ポートフォリオにおいて、金の比率が幅広く高まっている傾向に一致しています。米ドルの保有割合が約40%まで低下する一方、金の割合は約28%まで上昇しています※18。
新興国が金を買い続けている
中央銀行は2026年第1四半期に115トンの金を売却したにもかかわらず、ネットでは約244トンを買い越しました。これは前四半期を17%、前年同期を3%、さらに過去5年間の四半期平均を8%上回ります※19。
新興国の準備資産担当者は引き続き、公的部門の金需要を支える主要な原動力です。過去36ヵ月では、東欧とアジアの中央銀行はそれぞれ月平均12トン、11トンの金を買い越してきました※20。
最近の動きもこの傾向と一致しており、ポーランド国立銀行は4月に14トンを購入し、年初来の購入量は45トンとなりました。また、中国人民銀行は5月に10トンを追加購入し、保有量は2,332トンに達しました。買いは19ヵ月間続き、月次としては2024年12月以来の最大の購入量となりました※21。
2026年も、17年連続で中銀は「買い越し」の年になる見通し
当社のチームは、2026年が世界金融危機(GFC)以降、17年連続で中央銀行が金を買い越す年になるとの見方を維持しています。当社のモデルでは、2026年の需要は約680〜820トンの範囲内で、基本シナリオでは約765トンと予想しています※22。
3月にはロシアとトルコの中央銀行が、資金需要や通貨変動、財政赤字など国内の圧力に対処するために金を売却しましたが、当社は、こうした事例は結果的に金が戦略的かつ流動性の高い準備資産であることを改めて示すものと考えています。
実際、ストレスがかかる局面で金を活用できれば、長期的に準備資産を運用するうえで、金を保有することの意義が弱まるどころか、むしろ強まることになります。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、約半世紀にわたり、機関投資家、金融プロフェッショナル、そして個人投資家に、より良い成果をもたらしてきた。
インデックス運用やETF(上場投資信託)分野における早期からの取り組みを含め、同社の投資手法は、市場に裏付けられた運用ノウハウと、投資家ニーズへの継続的な対応を基盤としている。
2025年6月末時点において、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが関与する運用資産残高は5兆米ドルを超えており、60カ国以上の顧客に対してサービスを展開している。その中には、グローバル規模での戦略的パートナーシップを通じた提供も含まれ、コスト効率に優れた幅広い投資手段を提供している。ETFの運用資産総額1兆6,898.3億米ドルを含み、そのうち約1,160.5億米ドルは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ・ファンズ・ディストリビューターズ・エルエルシー(「SSGA FD」)がマーケティング・エージェントを行っているSPDRの金の資産となっている。SSGA FDはSSGAの関連会社で、すべての運用資産残高は監査前の数値。
なお、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が行う資産運用関連業務のブランド名である。
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連載【ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント】金・株式市場を徹底分析
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本稿に示されている見解は2026年6月30日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
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〈注記〉
※1 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※2 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※3 Source:ICE, State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※4 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※5 Source:Bloomberg Finance L.P., as of 06/30/2026
※6 Source:IIF, State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※7 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※8 Source:China Customs, LBMA, SGE, State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※9 Source:Morningstar, State Street Investment Management, as of 05/31/2026
※10 Source:World Gold Council, State Street Investment Management, as of 06/27/2026
※11 Source:World Gold Council, State Street Investment Management, as of 06/27/2026
※12 Source:China Customs, State Street Investment Management, as of 05/31/2026
※13 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※14 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※15 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※16 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※17 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※18 Source:Bloomberg Finance L.P., as of 06/30/2026
※19 Source:World Gold Council Global Demand Trends: Q1 2026, as of 04/29/2026
※20 Source:World Gold Council, as of 06/03/2026
※21 Source:World Gold Council, as of 06/12/2026
※22 Source:State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※23 Source:Federal Reserve Z.1, U.S. Treasury TIC, Bloomberg Finance L.P., and State Street Investment Management, as of 06/30/2026
※24 Source:European Central Bank: The international role of the euro, as of 06/30/2026
※25 Source:World Gold Council Global Demand Trends: Q1 2026, as of 04/29/2026
※26 Source:YouGov, World Gold Council, Central Bank Gold Reserves Survey 2026, as of 06/16/2026
※27 Source:Bloomberg Finance L.P., State Street Investment Management, as of 06/30/2026
〈出所〉
★1 出所:ブルームバーグ・ファイナンス L.P.、ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年6月27日時点。記載されているパフォーマンスデータは過去のパフォーマンスです。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
★2 出所:ユーガブ、ワールド ゴールド カウンシル、中央銀行金準備サーベイ2026、2026年6月時点。
★3 出所:FRB 資金循環統計(Z.1)、米財務省 国際資本統計(TIC)、ブルームバーグ・フィナンシャル L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年3月30日時点
〈用語集〉
用語集
・中央銀行:一つの国または国家連合で用いられる通貨と信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関
・COMEX:コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場
・金のスポット価格:スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
・実質金利:インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。
・ICEブレント:インターコンチネンタル取引所(ICE)で取引されるブレント原油先物で、国際的に取引される原油の主要なベンチマーク価格の一つです。
・レフトテール・ヘッジ:株式急落、政策ショック、通貨の不安定化など、極端に悪い市場結果(下振れ)からポートフォリオを守るためのポジション。金は、市場全体におよぶストレス局面における過去のパフォーマンスから、レフトテール・ヘッジとして位置づけられることが多いです。
・30日移動平均ボラティリティ:資産の過去30日間のリターンの年率換算標準偏差を測定、変動するリスクを示すため毎日更新されます。価格変動の激しさを定量し、値が高いほどリスクが大きいことを示します。
・ディベースメント(通貨価値の切り下げ):通常、インフレ、過剰な通貨発行、あるいは時間の経過とともに通貨の価値を弱める政策によって引き起こされる、通貨の実質価値または購買力の低下を指します。
・タカ派的な政策転換:中央銀行や政策当局のメッセージが金融引き締め方向へとシフトすることで、通常、政策金利の引き上げ、利下げ幅の縮小、あるいはインフレ抑制の強化を示唆します。
・代替不換通貨:主要な準備通貨(特に米ドル)の代替として使用される、非伝統的な不換通貨を指します。
・国際金融協会(IIF):銀行、資産運用会社、保険会社、政府系ファンド、ヘッジファンド、中央銀行やその他世界の金融機関を代表する国際的な金融業界団体です。IIFは各国政府、家計、企業、金融機関の債務水準を追跡する「グローバル債務モニター」で広く知られています。