見守りだけでは埋まらなかった休日の孤独
紀子さんは、娘に寂しいとは言えませんでした。
「娘にも娘の家庭があります。せっかくの旅行をやめて、私のところへ来てほしいとは言えません」
娘からは定期的に連絡があり、関係が悪いわけではありません。しかし、娘の家族写真が送られてくると、うれしさと同時に、自分がその場にいないことを意識してしまうことがありました。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、直近1年間に何らかの社会活動へ参加した65歳以上の人のうち、生きがいを「十分感じている」または「多少感じている」と答えた割合は84.6%でした。いずれの活動にも参加しなかった人より23.0ポイント高く、住まいだけでなく、継続的に社会と関わる機会を持つことの重要性がうかがえます。
なお、「シニアマンション」という名称に統一された法的定義があるわけではありません。分譲型、賃貸型、サービス付き高齢者向け住宅など仕組みはさまざまで、提供される見守りや生活支援、介護サービスの範囲も異なります。入居時には、費用だけでなく、行事の開催状況や体調悪化時の対応、将来介護が必要になった場合に住み続けられるかを確認する必要があります。
紀子さんは、翌年から連休の過ごし方を変えました。マンション内で一人暮らしをする知人に声をかけ、昼食を一緒に取る約束をしたのです。
最初は「家族と過ごすかもしれない」と遠慮していましたが、相手からは「私も予定がなくて困っていた」と打ち明けられました。やがて3人ほどで集まり、近所の喫茶店へ出かけるようになりました。
また、娘とも話し合い、連休中に会えない場合は、前後の週末に食事をする日を決めることにしました。
「いつ会えるかわからないことがつらかったのかもしれません」
シニアマンションには、住まいの安全や日常生活を支える仕組みがあります。しかし、そこで人間関係が自動的に生まれるわけではありません。
紀子さんは今も、連休前になると少し気持ちが沈むといいます。それでも、自分から予定をつくり、寂しさを誰かに伝えられるようになりました。
安心して暮らせる場所に、自分なりのつながりを重ねることが、長く穏やかに暮らすための備えになるでしょう。
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