「ドバイなら何を買っても上がる」時代ではない
ここまでの数字だけを見ると、ドバイ不動産は非常に強い市場に見えるかもしれません。しかし、投資家が最も注意すべきなのは、市場全体の安定と、個別物件の安全は同じではないという点です。
過去12か月では、供給を増やしにくいパーム・ジュメイラの戸建て価格が37%上昇した一方、引渡しが集中するドバイ・フェスティバル・シティは10%下落しました。同じドバイでも、結果には大きな差があります。
この差を生むのは、供給の希少性、周辺の賃貸需要、今後の引渡し戸数、そして購入価格です。上半期の住宅平均グロス利回りは6.58%と、依然として高い水準でしたが、利回りもエリアや物件タイプによって異なります。表面上の平均値だけで判断してはいけません。
ドバイという都市を選んだだけで、投資が完了するわけではありません。これからは、エリア、物件、購入条件をどこまで選別できるかが、結果を左右します。
今回のデータから投資家が学ぶべきこと
2026年上半期の売買総額は12.6兆円、8万5,998件でした。史上最高だった前年に次ぐ規模です。戦争を挟みながらも、市場は止まらず、価格指数も全面崩壊を免れました。ドバイ不動産市場が、以前よりも成熟し、外部ショックへの耐性を高めていることは確かでしょう。
しかし、今回の結果を「戦争が起きても大丈夫だった」と単純化するのは危険です。戦線の拡大、ホルムズ海峡の長期的な機能不全、金融・決済インフラへの影響が起きれば、前提は変わります。航空や観光、短期賃貸は、売買市場より早く影響を受ける可能性もあります。
投資家に必要なのは、ニュースに反応して慌てて売買することではありません。売却を急がなくてもよい資金で投資すること。保有を続けられる期間を考えておくこと。そして、どの条件が崩れたら判断を見直すのかを、事前に決めておくことです。
今回のデータが示したのは、「ドバイは無傷だった」ということではありません。厳しい環境でも市場機能を維持し、限定的な調整で耐えたという事実です。そして市場が耐えた後には、物件ごとの差が、これまで以上にはっきりと表れます。今後問われるのは「ドバイで何を選ぶか」だといえるでしょう。
※ 『エミネンス・レポート2026上半期』(https://eminenceluxe.com/eminence-report)
森 和孝
Eminence Luxe(ドバイ不動産仲介会社)Founder/CEO
One Asia Lawyers 国際弁護士(UAE法、シンガポール外国法、日本法)

