契約内容と被害回復の可能性
「どうして相談してくれなかったの」
由美子さんが尋ねると、和子さんはうつむきました。
「あなたは仕事で忙しいでしょう。近所に迷惑がかかったら困ると思って……」
話を聞くと、業者からは「雨が降る前に工事をしたほうがいい」「今日なら職人がいるので対応できる」と契約を急がされ、その場で判断してしまったといいます。
由美子さんは怒りを感じましたが、母を責めても現金は戻りません。まず屋根の状態を確認するため、以前から付き合いのある地元業者へ点検を依頼しました。
その結果、瓦には経年劣化が見られるものの、すぐに工事が必要な状態ではありませんでした。実際に行われた作業内容も、150万円という金額に見合うものとは考えにくいとの説明を受けました。
由美子さんは契約書や領収書、業者の名刺、工事箇所の写真などを持って、最寄りの消費生活センターへ相談しました。
訪問販売では、契約書面を受け取った日から原則8日以内であれば、クーリング・オフができる場合があります。また、契約書に必要事項が記載されていなかったり、事実と異なる説明によって契約したりした場合には、期間を過ぎていても契約の取消しや返金を求められる可能性があります。
今回は契約からすでに3週間が経過していたため、すぐに解決できる状況ではありませんでした。しかし、相談員からは、契約書の内容や勧誘方法を詳しく確認したうえで、業者との交渉を進めることが重要だと説明を受けました。
「もっと早く相談すればよかった」
和子さんは肩を落としました。
「迷惑をかけたくなくて、自分で何とかしようと思ったの」
「相談されることは迷惑じゃないよ。払う前に一度だけ連絡して」
母娘は、住宅修繕など高額な契約を結ぶ際には、必ず家族へ相談することを約束しました。玄関には「訪問販売お断り」のステッカーを貼り、近所の民生委員にも事情を伝えています。
国民生活センターには、点検商法に関する相談が毎年数多く寄せられています。突然訪問して不安をあおり、高額な契約を急がせるケースでは、一人で判断せず、少しでも不安を感じたら家族や消費生活センターへ相談することが大切です。
和子さんは、「家族に迷惑をかけたくない」「早く対応しなければ」という思いが重なり、冷静な判断ができなくなっていました。
高齢の家族を守るためには、現金の保管場所を確認するだけでなく、「高額な契約をするときは必ず誰かに相談する」という約束を日頃から共有しておくことも、大切な備えの一つといえるでしょう。
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