給付付き税額控除の導入で見えてくる所得税制の課題――「公平な給付」のために必要な税制再編とは?

給付付き税額控除の導入で見えてくる所得税制の課題――「公平な給付」のために必要な税制再編とは?
(※写真はイメージです/PIXTA)

社会保障国民会議の実務者会議で、給付付き税額控除の導入について大筋で合意したと報じられました。所得の少ない人や子育て世帯を支援する新たな制度として期待されていますが、給付対象となる所得の範囲や資産の把握方法など、多くの課題が残されています。制度が恒久化されれば、「本当に支援が必要な人へ適切に給付できるのか」という公平性が一層問われることになるでしょう。給付付き税額控除を契機に、所得税制全体の見直しを考える必要があります。

利子所得課税は公平性と徴税効率のバランスが課題

利子所得については、第二次世界大戦後には郵便貯金の利子への優遇措置が設けられ、昭和38年以降は預貯金利子に対してマル優制度が適用されていました。

 

しかし、制度の悪用が相次いだことなどを背景に、平成15年以降は現在の源泉分離課税へと移行しています。

 

現行制度は、金融機関で税金が徴収されるため徴税漏れが少なく、税務執行の面では優れた仕組みです。一方で、高額所得者であっても総合課税による累進税率の適用を受けないため、富裕層にとって有利な制度となっているとの指摘もあります。

マイナンバーの活用を含めた制度見直しも選択肢

マイナンバー制度は普及が進んでいますが、すべての預金口座に番号が付されているわけではありません。

 

理想をいえば、源泉分離課税を廃止し、利子所得も総合課税へ移行することが考えられます。しかし、現実には実務上の課題も多く、実現は容易ではありません。

 

そこで一つの選択肢として考えられるのが、一定額を超える高額な利子所得について、より高い税率で源泉徴収を行う仕組みです。

 

もっとも、このような制度を導入すれば、預金を複数口座に分散したり、金融機関を分けたりして課税を回避しようとする動きも想定されます。そのため、大口預金についてはマイナンバーの登録を義務化することも検討に値するでしょう。制度を完全に回避されない仕組みを構築することは難しいとしても、大口預金者の多くを把握できれば、制度の実効性は大きく向上すると考えられます。

給付付き税額控除を契機に所得税制全体の議論を

公平な給付を実現するためには、誰がどれだけの所得を得ているのかを正確に把握する仕組みが不可欠です。その意味では、今回の制度導入を契機として、源泉分離課税のあり方や金融所得の把握方法、さらにはマイナンバー制度の活用を含めた所得税制全体の見直しについて議論を深める時期に来ているのではないでしょうか。

 

公平な給付を実現するためには、公平な所得把握が前提となります。給付付き税額控除の導入は、日本の所得税制をより実態に即したものへと再構築する契機となる可能性があります。

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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