1日中スマホを手放せない日々
藤本さんは、朝9時に取引が始まると、15時半の取引終了まで何度もアプリで株価を確認するようになりました。仕事をしていた頃なら、そんなこともなかったでしょう。しかしリタイアして時間がある今は、いくらでもスマホを見ることができてしまうのです。
ところが、藤本さんが買った直後から、株価は下落に転じました。下がる株価にイライラする気持ちが止まらず、何をしていても集中できなくなりました。取引時間が終わっても、「この先どうなるのか……」。不安でしかたなく、SNSを見る手を止められません。
そんな日が数日続くと、藤本さんはすっかり疲れてしまいました。目から来る疲労と頭痛、スマホを持つ手は震え、ストレスで食欲も薄れました。「なんで株なんて買ったんだろう」……短期間でそんなことを思うようになってしまったのです。
老後に大切なのは「大きく増やすこと」より「安心して続けられること」
株価は購入時より約3割下落しました。評価額は約140万円まで減っていましたが、そこで“損切り”を決断した藤本さん。「待てばよかったのでは」という意見にも、首を横に振ります。
「60万円の損失は小さくはない。悩みましたよ。でも、それ以上に株価に振り回されて、スマホに支配されるような生活と1秒でもはやく離れたかった。いい勉強代でしたよ。私は個別株をやるには勉強不足ですし、精神的にも難しいとわかったから」
今後はインデックスファンドの積立1本でいくと心に決めたといいます。それとは別に生活費も見直し、アルバイトも始めようかと考えているとか。
「節約は大変だけど自分でコントロールできますからね。失ったお金を早く取り戻したいし、積立額も少し増やしたい。アルバイトをして地道に頑張りながら、安全に増やせたら一番いいかなと」
世間が盛り上がっていれば「自分も」と思うのは自然なことかもしれません。しかし、その結果がどうなっても、誰も責任は取ってくれません。大きなリターンを期待すれば、それに見合うリスクやストレスも背負うことになります。
自分がどこまでなら受け入れられるのか――それを見極めることこそ、老後の資産運用では欠かせない視点といえるでしょう。
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