内定を得るため見直したこと
転職活動を始めて3ヵ月が過ぎても、内定は得られませんでした。浩之さんは次第に、自分の25年間を否定されたような気持ちになりました。
「売上を作ってきたのに、肩書がないだけで…」
妻にそう漏らすと、意外な答えが返ってきました。
「肩書だけの問題なの? あなたが何をしてきたのか、相手に伝わっていないんじゃない?」
浩之さんは紹介会社の担当者に改めて相談し、職務経歴書を見直しました。従来の書類には、売上額や達成率ばかりを並べていました。しかし話を掘り下げると、別の経験も見えてきました。
新人に同行して商談の進め方を教えたこと、成績が低迷した後輩と訪問計画を組み直したこと、営業所内で顧客情報の共有方法を整えたこと。正式な管理職ではなくても、周囲の成果を支える役割は担っていました。
「管理職経験はありません。ただし、5人の若手社員に対する営業同行や案件相談を継続して担当し、提案書の標準化にも取り組みました」
次の面接では、役職がなかったことをごまかさず、担った役割と限界を分けて説明しました。
一方で、希望条件も見直しました。年収720万円以上にこだわらず、まずは営業の専門職として入社し、将来的にチームリーダーを目指せる会社まで対象を広げたのです。
その後、浩之さんは中堅企業から内定を得ました。提示された年収は680万円と現職を下回りましたが、役職は営業主任。半年後をめどに、若手3人の育成も任される予定です。
転職を決めるかどうか、浩之さんは家族と相談を続けています。
中高年の転職では、長年働いてきた事実だけでなく、その間にどのような課題を解決し、周囲へどんな影響を与えたかが問われます。足りない経験から目をそらさず、すでに持っている力を具体化すること。それが、キャリアの壁を越える最初の一歩になるのかもしれません。
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