フィリピン経済見通しの下方修正と現状の課題
国際通貨基金(IMF)は2026年7月9日に発表した世界経済見通し(WEO)の改訂版で、フィリピンの国内総生産(GDP)成長率予測を下方修正しました。2026年は従来の4.1%から3.9%へ、2027年も5.8%から5.5%へとそれぞれ引き下げられています。背景にあるのは中東地域での軍事衝突の激化であり、原油価格の上昇と、それに伴う経済活動の抑制が成長の重石になっているとみられます。
2026年の予測値は、フィリピン政府が掲げる3.5%〜4.5%という目標レンジには収まっているものの、2025年に記録した4.4%成長を下回る水準です。実現すれば、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた時期以来の低成長率となる可能性があります。
実際、2026年1〜3月期の実質成長率は2.8%にとどまり、市場予想や政府見通しを下回る結果となりました。2月28日に始まった米国・イスラエルによるイランへの攻撃を契機に原油価格が急騰し、その影響が他の商品価格にも波及し、家計の実質購買力を圧迫したことが主因とされています。加えて、洪水対策事業をめぐる汚職問題の発覚により公共投資の執行が遅れていることも、成長の下押し要因として指摘されています。
地域全体で見ると、ASEAN主要5カ国の成長率見通しは4.1%で据え置かれました。フィリピンはインドネシア(5.0%)やマレーシア(4.7%)を下回る見込みである一方、タイ(1.9%)は上回る見通しです。
フィリピン経済を下支えする柱の一つである海外フィリピン人労働者(OFW)からの送金は、2026年4月時点で前年同月比2%増の27億1800万ドルを記録し、増加基調自体は維持されました。ただしこれは過去11カ月で最も低い伸びであり、地政学的な緊張の高まりやインフレの高止まりが送金の勢いを鈍らせつつある可能性があります。それでもフィリピン中央銀行(BSP)は通年で3%増、367億ドルという見通しを維持しており、依然として家計消費を支える最重要の外貨流入源であることに変わりはありません。
一方、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)産業は堅調さを保っています。2026年の業界収益は357億〜420億ドル規模に達し、雇用者数は約197万人に拡大する見込みです。Global Capability Center (GCC)などAI活用や高付加価値サービスへのシフトが進む中、同産業は国内GDPの約8.5%を占め続けており、外貨獲得と雇用創出の両面で経済を支える存在となっています。

