サプライチェーンの「新星」フィリピンを阻む二大リスク
フィリピンは今、世界のサプライチェーンにおいて「Rising Stars(台頭する新星)」として熱い視線を浴びています。その一方で、高コストなエネルギー構造と深刻な汚職スキャンダルという二大課題に直面しており、投資家からの信頼を失墜させるリスクも指摘されています。この状況は単なる一時的な下振れではなく、同国経済の持続的な成長を左右する構造的な岐路と言えるでしょう。
米リスク分析企業ベリスク・メープルクロフト(Verisk Maplecroft)が発表した「2026年サプライチェーン・リスク・アウトルック」では、フィリピンはタイやアルゼンチン、チリ、ウルグアイなどとともに「Rising Stars」に位置づけられました。米中対立などを背景にサプライチェーンの多角化を模索するグローバル企業にとって、これらの国々は有力な選択肢となっています。
なかでもフィリピンは、市場開放性の大幅な改善が評価され、東南アジア諸国の中でも際立ったパフォーマンスを示しています。競争力のある労働コストに加え、若くて英語に堪能な豊富な労働力が最大の強みです。実際、電子機器や自動車部品、食品製造などの分野で、新たな投資機会が急増しています。
しかし、こうした明るい展望の裏には、看過できないリスクが横たわっています。その筆頭に挙げられるのが、エネルギーコストの高さです。フィリピンは石油供給の約90%を中東に依存しており、地政学的リスクに伴うホルムズ海峡危機の直撃を受けています。原油価格の高騰は、そのまま国内の電気料金を押し上げる要因となりました。同レポートも「エネルギーコストの高さが最大の障壁であり、ホルムズ危機がそれを悪化させている」と警鐘を鳴らし、再生可能エネルギー(RE)プロジェクトの早期立ち上げを促しています。
政府も手をこまねいているわけではありません。貿易産業省(DTI)は5月末時点で、総額3446億2000万ペソ相当にのぼる13件の再エネプロジェクトを、認可手続きを迅速化する「グリーンレーン」制度に認定しました。送電網の強化などエネルギーインフラの拡充を急いでいますが、これらの構造改革が実を結ぶには時間を要するため、短期的なコスト抑制効果は限定的と言わざるを得ません。

