人口ボーナスを超え…フィリピン経済を動かす「巨大財閥」の正体
東南アジアの中でも、安定して高い経済成長を続けるフィリピン。そのダイナミズムを支えているのは、単なる人口ボーナスだけではありません。実は、同国経済の大部分をコングロマリットと呼ばれる巨大財閥が動かしているという、独自の市場構造が存在します。
最近の現地報道(BusinessWorld紙)によると、フィリピン屈指の財閥であるアライアンス・グローバル・グループ(AGI)は、世界的なインフレや需要減退という逆風下にあっても、多角化された事業ポートフォリオによって堅調な業績を維持しています。これは単なる一企業の成功物語ではなく、フィリピン財閥全体に共通する「生存戦略」と「強靭なビジネスモデル」を象徴するものです。こうした変化の激しい時代を生き抜くためのビジネスの示唆は、フィリピン経済の背骨を形作る主要財閥の動向を紐解くことで見えてきます。
まず、フィリピンでビジネスを展開する際に避けて通れないのが「SMインベストメンツ」です。彼らの戦略は、小売・銀行・不動産の三位一体によるプラットフォームの独占にあります。同社が展開する巨大ショッピングモールは、単なる商業施設ではなく、行政手続きや銀行、交通機関の拠点、娯楽が集約された「都市の心臓部」として機能しています。フィリピン人の生活動線そのものを握っているため景気変動の影響を受けにくく、国民はSMの施設を訪れ、グループ傘下のBDOユニバンクを使い、SMのスーパーで消費します。この圧倒的な生活インフラ化こそが、他社の追随を許さない参入障壁となっています。
このSMと並び、ブランド力と先見性で市場を牽引するのが、フィリピン最古の財閥である「アヤラ・コーポレーション」です。同社は高度なコーポレート・ガバナンスを維持しつつ、電子マネー「GCash」を爆発的に普及させるなど、旧来の不動産・金融ビジネスをデジタルへと進化させています。特に都市開発においては単に建物を建てるだけでなく、マカティやボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)のような洗練されたビジネス地区自体をデザインする能力に長けています。さらに再生可能エネルギーへの早期参入など、世界のトレンドをいち早く自社のポートフォリオに取り込む柔軟性も備えています。
また、デジタル変革の文脈において現在最も注目を集めるのが、自らを「テック・グロマリット(テクノロジー×財閥)」と再定義する「アボイティス・エクイティ・ベンチャーズ」です。同社は発電・配電という極めて安定したインフラ収益基盤を持ちつつ、そこから得た潤沢な資金を銀行部門(ユニオンバンク)の徹底したデジタル化に投入しています。フィリピンの構造課題である金融アクセスの低さをデジタルバンクで解決しようとするなど、社会課題の解決を次のビジネスチャンスに昇華させる戦略が際立ちます。

