中東情勢を背景としたBSPの政策金利引き上げと今後のシナリオ
フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas、以下BSP)は2026年6月18日の金融政策決定会合において、政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げ、4.75%に設定しました。これは同年4月に続く2会合連続の利上げとなり、政策金利は昨年8月の5.0%以来、約1年ぶりの高水準に接近しています。オーバーナイト預金ファシリティ金利は4.25%、貸出ファシリティ金利は5.25%にそれぞれ引き上げられました。
今回の利上げの直接的な引き金となったのは、2026年2月末に勃発した中東の紛争に起因する原油価格の高騰です。BSPは声明の中で「インフレ圧力は依然として強く、国際的な原油・肥料価格が高止まりし、国内の燃料・食料価格を押し上げ続けている」と述べています。
実際、フィリピンのヘッドラインインフレ率は、BSPの目標レンジ(2〜4%)を大きく上回り、4月には3年超ぶりの高水準である7.2%に達しました。5月はやや鈍化して6.8%となりましたが、コアインフレ率は3.9%から4.1%へと上昇し、2023年12月以来初めて目標を超えました。こうした数字は、インフレが燃料や食料品にとどまらず、経済全体に広く波及しつつあることを示しています。
一方で、地政学的な局面には変化の兆しも見え始めています。米国とイラクの間で和平プロセスが進展し、近い将来に終結することが宣言される見通しが国際メディアでも取り沙汰されています。このシナリオが実現した場合、中東からの原油供給の安定化を通じて国際原油価格が下落に転じる可能性があります。
原油価格が落ち着けば、BSPが最も懸念するコストプッシュ型インフレの圧力が和らぎ、金融引き締めサイクルの早期終了、あるいは将来的な利下げへの転換が視野に入ってきます。BSP自身も「物価上昇率を目標レンジの中央値である3%に収束させるため、今後も必要に応じて追加措置を講じる」と含みを持たせつつも、今回の措置を「節度ある(measured)」ものと表現しており、過度なタカ派姿勢は取っていません。中東情勢の収束は、フィリピンの金融政策にとって最大の「外部変数」です。

