デジタル多角化とASEAN市場でのポジショニング強化
世界的にAIブームが加速する中、生成AIの計算需要に伴うデータセンター建設が急拡大しています。このような世界的な潮流の中で、フィリピン通信大手各社は伝統的な通信事業からフィンテックやデータセンター分野への多角化を進め、ASEAN諸国でのポジショニング強化を図っています。
PLDTはフィンテック企業Mayaの新規株式公開(IPO)を巡り、投資ファンドKKRと協議を続けています。Manuel V. Pangilinan会長は株主総会後の会見で、Mayaへの出資比率引き上げを検討するとともに、上場を通じた一部投資家のエグジット(資本回収)も視野に入れていると述べ、柔軟な姿勢を示しました。
Mayaは2026年後半のIPOを目指し、まずは米国市場、次にフィリピン証券取引所への上場を計画しており、資本調達と出口戦略を実現しつつデジタル金融事業のさらなる基盤強化を図ります。現在の株主構成は、PLDTとFirst Pacificが合わせて39.6%を保有しているほか、KKR、Tencent、国際金融公社(IFC)などが名を連ねています。
一方、PLDTの取締役会は、データセンター事業「VITRO」の不動産投資信託(REIT)上場を承認しました。証券取引委員会(SEC)がREIT対象をデジタルインフラに拡大したことを受けた動きで、約3億〜4億ドルの資金調達が見込まれ、主に債務削減に充てられる予定です。2026年第4四半期の上場を目指しており、VITROはAI需要に対応した施設として成長を続け、独立事業としての企業価値最大化を狙います。VITRO Santa Rosaは同国初のAI対応ハイパースケール施設として50MW規模を誇り、将来的な拡大計画も進められています。
こうした取り組みはPLDT単独のものではありません。競合のGlobe Telecomもデータセンター分野への積極投資を展開し、ST Telemedia Global Data Centresなどとの合弁を通じて2026年内に30MW超の容量拡大を目指しています。また、Globe傘下のGCash(Mynt)は株式分割を実施し、2026年のIPOを視野に入れており、フィンテック分野での競争も激化しています。業界全体として、5G展開やブロードバンド強化に加え、データセンターやフィンテックへのシフトが顕著です。

