「毎週預かるのは、もう難しい」…限界を感じた決定的瞬間
結局雅子さんは発表会を欠席し、その週末も孫を預かりました。しかし日曜日の夕方、発表会を終えた友人たちの写真が、合唱サークルのグループに送られてきました。
「来年は一緒に歌おうね」
そのメッセージを見た雅子さんは、スマートフォンを閉じました。孫と過ごした時間に後悔はありません。それでも、自分の楽しみを何度も諦めてきたことが、胸に引っかかりました。
翌週も、娘からいつものように連絡が入りました。
「今週もお願いできる?」
雅子さんは画面を見つめたまま、すぐには返信できませんでした。
「孫はかわいい。でも、このまま毎週続けるのは正直きつい……」
その気持ちを初めて言葉にしたとき、自分でも驚きました。孫が負担なのではありません。自分の時間も予定も、当然のように後回しになっている暮らしに限界を感じていたのです。
雅子さんは切り出しました。
「毎週預かるのは、もう難しいと思う」
娘は困ったような顔をしました。
「でも、土日に預けられるところがなかなかなくて。お母さんも孫に会えてうれしいと思ってた」
「うれしいわよ。でも…」
雅子さんは食費や外出費が増えていること、自分の予定を断り続けていること、宿泊の翌日は疲れが残ることを伝えました。
こども家庭庁『令和7年 放課後児童健全育成事業の実施状況』では、全国の放課後児童クラブは2万5,928か所となっています。ただし利用時間や休日対応は施設ごとに異なり、勤務形態によっては既存の支援だけで預け先を確保できない家庭もあります。
また、ファミリー・サポート・センターでは、地域の会員同士が子どもの預かりや送迎を支え合う仕組みが設けられています。祖父母だけに頼らず、自治体の窓口で利用できる支援を確認することも選択肢です。
話し合いの結果、雅子さんが孫を預かるのは月2回までとし、宿泊は原則として月1回にしました。娘は職場に勤務日の調整を相談し、ファミリー・サポート・センターにも登録。預ける際の食費や外出費も、あらかじめ娘が渡すことになりました。
翌月、雅子さんは久しぶりに合唱サークルへ参加しました。そして孫が来る土曜日には、好物のカレーを作って待ちました。
「次は再来週に来るね」
「楽しみに待ってるよ」
雅子さんは心からそう言えました。
体力や家計、自分自身の時間にも限りがあります。関係を長く穏やかに続けるためには、我慢を重ねる前に、できることと難しいことを家族で共有する必要があるのです。
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