高齢単身者の増加で広がる「孤独のリスク」
法務省「犯罪白書(令和5年)」によると、高齢者の検挙人員は平成20年の4万8,805人をピークに減少傾向が続き、令和4年には3万9,144人に。このうち約8割(77.4%)を70歳以上が占めています。
また、女性高齢者の検挙人員は平成24年をピークに減少しているものの、令和4年でも1万2,289人に上ります。さらに、その約8割(82.5%)は70歳以上。高齢者の犯罪は全年齢層と比べて窃盗の割合が高く、特に女性高齢者では約9割が窃盗で、その大半が万引きによるものとなっています。
生活困窮が背景にあるケースもありますが、それだけでは説明できない事例も数多くあります。配偶者との死別や子どもの独立による孤立、地域とのつながりの喪失、抑うつ状態、認知機能の低下など、複数の要因が重なって衝動的な行動につながるケースもあると指摘されています。
雅恵さんが老人ホームへの入居を決めたのは、万引き事件をきっかけに、一人で暮らし続けることの限界を痛感したからでした。
3億円という潤沢な資産は、雅恵さんの老後の生活を物質的には支えてくれました。しかし、「おはよう」と声をかけ合える相手や、「最近どうですか」と気にかけてくれる人とのつながり――それをお金で買い求めることはできなかったのです。
万引きは、決して許される行為ではありません。しかし、高齢の単身世帯が増加する現代において、「孤独」というリスクは誰の身にも起こり得るものといえます。
その背景にある心の叫びや社会的な孤立に目を向けることも、超高齢社会を迎えた時代に求められている視点なのではないでしょうか。
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