「おじいちゃん、これ買って!」目に入れても痛くないほど可愛い孫の“おねだり”に脅えてしまう――。娘の在宅勤務終了に伴い、現役復帰さながらの激しい“孫守り”に駆り出されたシニアの生活と家計の変化とは?

始まりは「娘の在宅勤務終了」の通知

高橋進さん(仮名・76歳)は、妻の恵子さん(76歳)と二人暮らし。60歳での定年後、数年間は嘱託で働き、65歳からは夫婦で月19万円の年金を受け取りながら、穏やかなリタイア生活を送っていました。

 

そんな夫婦の日常が激変したのは、半年前のこと。徒歩15分ほどの距離に住む長女の美沙さん(仮名)の勤務先で、在宅勤務制度の事実上の終了(最大月2回まで可)が言い渡されたのがきっかけでした。

 

美沙さんは小学生の男の子2人を育てる共働きママ。これまでは週のほとんどを在宅でこなし、仕事の合間に子どもの迎えや習い事の段取りをしていました。しかし、原則出社へと会社の方針が転換。残業も増え、立ち行かなくなった美沙さんは、泣きつくように両親の元へやってきたのです。

 

「お父さん、お母さん、本当にお願い。会社が急にリモートワークをなくしちゃって。夫も多忙でしょう? 宿題を見てもらって、夕飯を食べさせておいてくれたら助かるんだけど……」

 

可愛い娘と孫のピンチです。快く引き受けた進さん夫婦でしたが、これが終わりのない日常の幕開けでした。

笑顔が引きつった「おねだり」のリアル

「ただいまー!」

 

元気に飛び込んでくる孫の姿に、最初は目を細めていた恵子さん。しかし、月〜金まで毎日となると、76歳の身体には想像以上の負担でした。やんちゃ盛りの男の子2人。家の中をドタバタと走り回り、宿題を見るのにも一苦労。さらに、週に3回の塾やサッカー教室への送迎が進さんの役目になりました。

 

「ごめん、今日も会議が長引いちゃって!」と疲れ果てて孫を引き取りに来る娘を責めることもできず、気づけば夕飯どころか、週に何度もそのまま泊まっていく生活が定着してしまったのです。

 

肉体的な疲弊もさることながら、進さんたちをじわじわと追い詰めたのは「孫費用」という名の出費でした。夫婦の年金は月19万円。これまではやりくり次第で少しずつ貯金もできていましたが、4人分の夕飯、毎日のようになくなる牛乳や麦茶、おやつ代……。さらに、孫たちの「おねだり」。

 

「塾用のノートなくなったから買って」
「カードゲームでどうしても欲しいキャラがいるんだけど……」

 

つぎ込みすぎて財布も心も余裕がなくなった進さんは、孫が「ねえ、おじいちゃん……」と服の裾を引っ張るだけで、笑顔が引きつるようになってしまったのです。

 

「孫からすると、親に頼むのと同じ感覚なんでしょうね」と、進さんは力なく俯きます。美沙さんからは、まとまった生活費や食費の補填はありません。しかし、忙しく働く娘夫婦に「孫にかかったお金は払ってくれ」とは、親のプライドもあってどうしても言えませんでした。

 

次ページ子や孫とのつきあいに求められる「適切な距離感」

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