「土地だけ手放したい」はできるのか
相続人からは、「預貯金は相続したいが、土地だけは手放したい」という相談も少なくないという。
しかし、相続放棄は財産全体を放棄する制度であり、土地だけを選んで放棄することはできない。
貝井税理士は、「相続放棄は『相続しない制度』であり、相続土地国庫帰属制度は『相続した後の制度』です。実務では、相続と、相続後の土地処分は分けて考える必要があります。相続放棄では、相続人全員が放棄した場合には相続財産清算手続を経て最終的に国庫へ帰属することがありますが、それは相続土地国庫帰属制度とは別の仕組みです」と説明する。
まず、相続の段階では、相続財産全体について遺産分割と相続税の計算を行う。そのうえで、相続後に土地を売却するのか、保有を続けるのか、それとも一定の要件を満たす場合に国庫帰属制度を利用するのかを判断することになる。
「相続放棄をすれば土地は国に引き取ってもらえる」と誤解されることもあるが、相続放棄と相続土地国庫帰属制度は、制度の目的も手続きもまったく異なるものだ。
問われているのは、日本の土地制度そのもの
問題の本質は、「国が詐欺をしているかどうか」という単純な話ではない。
相続税の評価方法と実際の市場価格とのズレをどう考えるのか。人口減少社会のなかで、誰が土地を引き継ぎ、管理していくのか。そして、資産として機能しなくなった土地を、社会全体でどのように扱うのか。
貝井税理士は、土地問題の背景には、より本質的な相続課題が潜んでいることも多いと指摘する。
「土地の相談から始まっても、実際には兄弟間の関係、親の認知症、遺言書の未整備、財産の整理不足などが本当の課題であるケースも少なくありません。土地だけではなく、相続全体を見据えた早めの準備が、結果として円満な相続につながるのではないでしょうか」
かつて、土地は持っているだけで価値が上がる資産だった。しかし、人口減少と高齢化が進む現在では、「相続したくない土地」が社会問題となりつつある。
都市部では地価上昇による相続税負担が課題となる一方、地方では「売れない」「管理できない」「子どもも引き継がない」という問題が深刻化している。土地を所有していること自体が、必ずしも資産とはいえない時代が到来しているのかもしれない。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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