「お前とは責任が違う」悪びれない兄の言葉
「遺産は母さんが2分の1、俺とお前で4分の1ずつでいいよな」
法定相続通りの分配だと当たり前のように主張する兄に、加奈子さんは耳を疑いました。
「え? ちょっと待って。私がどれだけ大変だったと思ってるの? お兄ちゃん何もしてないじゃない」
「見えないだけで心配してたよ。俺は、お前と違って自分の奥さんも子どももいるんだ。物理的に無理だろ? むしろ俺のほうがこれから金がかかる。自分のことだけ守ればいいお前とは責任が違うんだ。そうだろう?」
唖然とする加奈子さんは、母に救いの目を向けました。しかし、戻ってきたのはまさかの反応でした。
「家族だもの。面倒を見れる方が見るのは当たり前。お金のことは、平等にしないとモメるから。ね? 加奈子。わがまま言わないで」
「わがまま」――。その言葉に、加奈子さんはすべてを諦めました。お金と時間、将来のキャリア。どれだけのものを自分が失ってきたのか。きっと話をしてもわかってもらえない。そう悟ったのです。
加奈子さんは、その後、完全に母と兄と連絡を断ちました。「電話に出ろ。一人残った母さんをどうするんだ」「そんなに遺産が欲しかったのか」。兄のそんなLINEを見ましたが、今はもうブロック済みです。
「絶縁です。母のことは、兄が何とかするしかないでしょう。自分でやってみたら、私がどれだけ大変だったか、何を失ったのか気づくのかもしれませんね」
家族の絆を「争族」にしないために
今回のケースのように、不公平な介護負担などから、きょうだい仲が修復不可能になるケースは少なくありません。それを避けるためには、「誰が介護をし、その見返りとして財産をどう分けるか」を、オープンに話し合っておくことが、まずは大切です。
親の介護に従事した場合、相続時に「寄与分」として遺産を多くもらえる主張ができますが、身内間での証明は難しくなることもあります。話し合いで決めた内容は、法的に有効な「遺言書(できれば公正証書遺言)」を遺すことも有効でしょう。
加奈子さんの場合、優しさと責任感によって母親の希望を受け入れました。しかし、「仕事を辞めたり時短にしたりはできない」として、地域の包括支援センターなども交えて、可能な介護範囲や援助できる介護費について線引きをしておくことで、結果は大きく変わった可能性があります。
家族だからと自分を犠牲にする前に、「自分の生活を守るための境界線」をしっかり引く勇気こそが、家族関係の崩壊を防ぐ道なのです。
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