長男が語った…義娘が距離を置いた本当の理由
数ヵ月後、長男が一人で久美子さんを訪ねてきました。久美子さんはすぐに尋ねました。
「彩乃さんは、まだ怒っているの?」
長男はしばらく黙ったあと、静かに話し始めました。
「怒っているというより、ずっと苦しかったんだと思う」
彩乃さんは、日本での生活に慣れようと必死でした。言葉の壁、学校とのやり取り、地域との付き合い。長男が仕事で忙しいなか、分からないことを一人で抱え込むことも多かったといいます。
そこへ久美子さんから、食事やしつけ、日本語について何度も助言されるようになりました。久美子さんは支えているつもりでしたが、彩乃さんには「あなたのやり方ではだめ」と言われ続けているように感じられたのです。
「母さんが悪意で言っていないのは分かってる。でも、善意でも相手を傷つけることはあるよ」
その言葉に、久美子さんは何も言い返せませんでした。
久美子さんは、彩乃さんに手紙を書きました。言い訳ではなく、これまでの言葉が負担になっていたことを謝り、孫娘のことを大切に思っている気持ちだけを短く伝えました。
すぐに返事はありませんでした。それでも数週間後、長男を通じて孫娘の写真が一枚届きました。そこには、久美子さんが送ったぬいぐるみを抱いた孫娘の姿がありました。
関係が元通りになったわけではありません。彩乃さんと孫娘がすぐに日本へ戻るかも分かりません。それでも久美子さんは、以前のように「正しいこと」を伝えようとするのをやめました。
家族であっても、距離感を間違えれば傷つけてしまいます。特に子育てに関する言葉は、助言のつもりでも相手には批判として届くことがあります。
大切なのは、相手の暮らしや考え方を変えようとする前に、まず尊重する姿勢を持つことです。孫を思う気持ちがあるからこそ、親である夫婦の判断を信じ、必要とされたときに支える。その距離感が、家族の関係を長く穏やかに保つためには欠かせません。
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