会えない寂しさを埋めるために…夫婦が見つけた小さな居場所
一方で、年金月19万円の暮らしには現実的な不安もあります。総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円となっており、平均で毎月約4.2万円の不足が生じています。
義明さん夫婦の収入はこの平均より少なく、子や孫との関係だけに心を奪われ続ける余裕もありませんでした。
久美子さんはある日、団地の掲示板で地域サロンの案内を見つけました。最初は気が進みませんでしたが、義明さんと一緒に参加してみると、同じように子ども世帯と距離がある高齢者もいました。誰かの孫の話を聞くとつらくなる日もありましたが、自分たちだけではないと分かったことは、少し救いになりました。
義明さんも、自治会の清掃活動に顔を出すようになります。そこで同年代の男性と話すうちに、長男への怒りが少しずつ弱まっていきました。
自分たちが寂しさから息子家族に期待しすぎていたのかもしれない。そう考えられる日も増えました。
夫婦は長男に長い手紙を書くことにしました。責める言葉ではなく、感情的に言い返したことへの謝罪と、孫に会いたい気持ちを短く伝える内容です。
返事はまだありません。それでも、義明さんは「待つしかない」と話します。
親子の断絶は、どちらか一方だけが悪いとは限りません。生活の違い、言葉の受け止め方、期待の重さが重なり、距離が生まれることがあります。
義明さん夫婦は今も孫に会いたいと思っています。ただ、その日を待ちながら、自分たちの毎日も少しずつ立て直しています。
団地の廊下で交わす挨拶、地域サロンでの会話、夫婦で歩く夕方の散歩。失ったつながりの痛みを抱えながらも、別の小さなつながりを育てることが、静かな老後を支える力になっているのです。
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