(※写真はイメージです/PIXTA)

シリコンバレーには世界中のスタートアップや投資家が集まり、多くの日本企業もCVCを設立して新規事業の創出を目指しています。しかし、思うような成果を上げられず、撤退や縮小を余儀なくされる企業も少なくありません。その背景には、日本企業ならではの課題と、シリコンバレー特有のエコシステムの存在があります。本記事では杉野Scott祐介氏による書籍『アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集しヤマハの現地法人CEOが、自身の経験をもとに、現地で重要視される信頼のネットワークの実態を解説します。

エコシステムへの参入障壁が日本企業を阻む

私はヤマハに新卒として入社した当初、半導体のB to B営業に従事していた。営業対象にはAppleやGoogleも含まれており、当時からたびたびシリコンバレーを訪れる機会があった。

 

初めてこの場所に足を踏み入れたときにはGoogleのカラフルな社用自転車に乗ったり、Appleの本社でグッズを買い込んだりとワクワクしたものだったが、そんな浮ついた気持ちはすぐに立ち消えた。

 

世界トップのビッグテックを相手に、ヤマハの電子部品を売り込まなくてはならない。まるでドアの間につま先を滑り込ませ、入り口で粘り強く交渉するような泥臭い営業活動に勤しむ日々だった。

 

この頃からひと筋縄ではいかない土地だと身に染みて感じていたが、実際にシリコンバレーでCVC活動を行うようになり、その思いをあらためて噛みしめている。

 

テクノロジーの最先端、毎日のように世界を驚かせるイノベーションが生まれる地─。そんなイメージが先行し、日本では「シリコンバレー」という言葉が一人歩きしているように感じる。

 

この地を訪れたことがない人は、ハイテクな施設が密集し、洗練されたカフェに世界トップのエンジニアたちが集う未来都市のような光景を思い浮かべるかもしれない。

 

実態は、砂漠の中に6車線のフリーウェイが続く、何もない田舎町だ。むしろ、高層ビルが立ち並び、街を歩けばいくらでもしゃれたカフェやレストランに出会える東京のほうが、よほど華やかな街に見える。

 

シリコンバレーを抜けるフリーウェイを走っていると、低層ビルがぽつりぽつりと静かに立ち並ぶなか、突如としてGoogleやMetaといった誰もが知る企業のロゴが飛び込んでくる。

 

スタートアップやVC、CVCは、こうしたサンフランシスコの広大なベイエリアに点在している。決して物理的な距離は近くない。しかし、起業家と投資家の心理的距離は想像するよりもはるかに近く、密につながっている。

「信頼」で築かれるシリコンバレー最強のネットワーク

彼ら彼女らが所属するネットワーク内では、「Apple Musicの元重役が起業するらしい」「このスタートアップには気をつけろ」といった濃密な情報がチャットアプリで飛び交う。

 

もちろん、リアルな場でも積極的な交流が行われる。街の至るところで開催されるスタートアップと投資家のマッチングイベントや、過去に仕事をともにした縁が積み重なり、「友人の友人は自分の知り合い」といった濃いネットワークが築かれていく。

 

信頼できる元同僚が、信頼できるパートナー候補を紹介してくれるイメージだ。相互の信頼でつながれるこのエコシステムに入り込むことに困難を感じる日本企業は少なくない。

 

さらに、シリコンバレーには誰もがアクセスできるコミュニティーのほかに、信頼と実績を積み重ねた者だけにその門戸が開かれる、いわゆる「インナーサークル」が存在する。

 

実は、本当に有望なスタートアップというのは、この輪の中にいることがほとんどだ。インナーサークルというと、会員制のラウンジやバーに夜な夜な集い情報交換を行う秘密結社のようなイメージを持つかもしれないが、それは誤解だ。

 

ただ、インナーサークル外にいる人たちに比べ圧倒的に秀でた知見、経験を持つ人物たちが、質の高い情報をリアルタイムでやりとりをしている。

 

この輪の中に入り込むことができれば、より精度の高い情報や高度なネットワークにアクセスすることができる。その分、確実にビジネスの勝率は上がるのだ。

 

 

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※本連載は、杉野Scott祐介氏による書籍『アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論

アクションファースト シリコンバレーで成果を出す日本企業CVC実践論

杉野 Scott 祐介

幻冬舎メディアコンサルティング

世界屈指のイノベーション中心地であるシリコンバレーには、スタートアップ、投資家、そして世界的大企業が集まり、技術・資金・人材が絶えず交差することで、新たなビジネスが次々と生み出されています。 本書の著者は、楽…

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