(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の住まいとして、介護付き有料老人ホームやシニア向け住宅を検討する人は少なくありません。自宅管理の負担を減らし、将来の介護にも備えられる点は大きな安心材料です。しかし、費用を払えることと、そこで納得して暮らせることは同じではありません。生活環境、人間関係、自由度まで含めて考えなければ、入居後に思わぬ戸惑いを抱くことがあります。

「ここなら最後まで安心」…資産に余裕があった夫婦の決断

敏夫さん(仮名・77歳)と妻の和枝さん(仮名・75歳)は、夫婦二人で暮らしてきました。年金収入は月32万円ほど。自宅マンションの売却見込み額や預貯金を合わせると、総資産は約8,000万円ありました。

 

大きな病気はないものの、敏夫さんは足腰に不安を感じ始め、和枝さんも家事の負担を重く感じるようになっていました。子どもは二人いますが、それぞれ家庭があり、頻繁に頼ることはできません。夫婦は「子どもに迷惑をかけないためにも、早めに住み替えよう」と考えるようになります。

 

見学したのは、設備の整った介護付き有料老人ホームでした。食事は用意され、見守りもあり、将来介護が必要になっても相談できます。入居一時金と月額費用は決して安くありませんでしたが、資産状況から見れば払えない金額ではありません。

 

「お金さえあれば安心だと思っていたんです」

 

敏夫さんはそう振り返ります。実際、夫婦は費用面ばかりを気にしていました。入居一時金はいくらか、月額費用は年金でどこまで賄えるか、追加費用はどの程度か。もちろん大切な確認ですが、暮らしの細部までは十分に想像できていませんでした。

 

入居してしばらくは快適でした。掃除や食事の負担が減り、夜間に何かあっても職員がいる安心があります。ところが、数ヵ月が過ぎると、和枝さんは少しずつ表情を曇らせるようになりました。

 

食事の時間が決まっていること。外出には事前の連絡が必要なこと。共有スペースでの人間関係に気を使うこと。自宅では当たり前だった自由が、少しずつ制限されているように感じられたのです。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円となっており、平均で毎月約4.2万円の不足が生じています。敏夫さん夫婦は平均より余裕がある世帯でしたが、老後の安心は支払い能力だけでは決まりませんでした。

 

 

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