(※写真はイメージです/PIXTA)

定年が近づくにつれて、退職金や年金を基に老後の生活設計を考え始める人は少なくありません。しかし、現役時代に一定の収入があっても、教育費や住宅ローン、親の支援などが重なれば、思ったほど資産が残っていないこともあります。「定年後は何とかなる」と考えていた家計ほど、退職直前に現実を突きつけられることがあります。

退職金は「ご褒美」ではなかった…夫婦が向き合った老後設計

誠一さんが最もショックを受けたのは、退職金の使い道でした。自分では、長年働いたご褒美として少しは自由に使えると思っていました。しかし由美子さんは、住宅ローンの残債、老後の生活費、医療費、家の修繕費を一覧にし、退職金の多くがそれらに消えていく可能性を示しました。

 

「旅行に行きたい気持ちは分かる。でも、まず生活を守らないと」

 

その言葉は冷たく聞こえましたが、由美子さんも夫を責めたいわけではありませんでした。家計を預かってきた立場として、数字をごまかせなくなっただけです。

 

厚生労働省『令和6年簡易生命表』によると、日本人の平均寿命は男性81.09年、女性87.13年です。定年後の生活は長く続きます。退職金は一時的なまとまった収入であっても、20年以上の生活を支える原資になることがあります。

 

誠一さん夫婦は、その日から家計を見直しました。退職金で住宅ローンを完済するか、手元資金をどれだけ残すか。再雇用で何歳まで働くか。車を維持するか、保険を見直すか。

 

ひとつずつ確認していくうちに、誠一さんも「定年後の生活をどう組み立てるか」が重要なのだと理解していきました。

 

最初は落ち込んでいた誠一さんでしたが、数週間後には少しずつ気持ちが変わりました。現実を知らないまま退職を迎えるより、2年前に気づけたことは救いでもあります。

 

夫婦は旅行を完全に諦めたわけではありません。退職直後の大きな出費は避け、近場の温泉や日帰り旅行から楽しむことにしました。

 

定年が見えてからではなく、少し早い段階で夫婦が同じ数字を見て話し合うことが大切です。残酷に見えた現実も、向き合う時期が早ければ、暮らしを立て直すきっかけになるのかもしれません。

 

 

 

 

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