(※写真はイメージです/PIXTA)

定年が近づくにつれて、退職金や年金を基に老後の生活設計を考え始める人は少なくありません。しかし、現役時代に一定の収入があっても、教育費や住宅ローン、親の支援などが重なれば、思ったほど資産が残っていないこともあります。「定年後は何とかなる」と考えていた家計ほど、退職直前に現実を突きつけられることがあります。

「定年したら少しは楽になる」と信じていたが…

誠一さん(仮名・59歳)は、メーカーで長く働いてきた会社員です。現在の年収は約750万円。若い頃から仕事中心の生活を送り、残業や単身赴任も経験しながら、妻の由美子さん(仮名・57歳)と二人の子どもを育ててきました。

 

子どもたちはすでに社会人になり、住宅ローンもあと数年で完済予定です。誠一さんは、定年まであと2年となった今、「ようやく肩の荷が下りる」と感じていました。退職金が入ればローンを整理し、夫婦で旅行にも行ける。再雇用で収入が下がっても、節約すれば何とかなるだろうと考えていたのです。

 

ところがある休日、由美子さんが家計の資料をテーブルに広げました。預金通帳、保険証券、住宅ローン残高、子どもの教育費に使った記録。誠一さんは最初、退職後の旅行計画でも話すのかと思っていました。しかし、由美子さんの表情は硬いままでした。

 

「一度、ちゃんと現実を見てほしいの」

 

そう言われて確認した数字に、誠一さんは言葉を失います。預貯金は思っていたほど残っていませんでした。住宅ローンはまだ残り、親の介護費用を援助した時期もあり、子どもの大学費用も想像以上に大きかったのです。

 

「何十年も働いてきたのに……」

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円となっており、平均で毎月約4.2万円の不足が生じています。年金生活では、日常の生活費だけでも貯蓄の取り崩しが必要になる世帯が少なくありません。誠一さん夫婦も、退職金を自由に使えるお金だと考える余裕はありませんでした。

 

さらに問題だったのは、定年後の収入見通しです。再雇用後は給与が大きく下がる見込みで、賞与も現役時代ほど期待できません。住民税や社会保険料の負担もすぐに軽くなるわけではなく、退職直後の家計は想像以上に厳しくなる可能性がありました。

 

 

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