SaaS開発直前のピボットと、決裁者を動かした「生々しい熱量」
日本電気株式会社(NEC)
【企業概要】
1899年創業。「Better Products, Better Services.」を創業の精神に、イノベーションを通じて新技術を社会に実装してきた総合ICT企業。現在は、AIやセキュリティを軸に、社会や産業の変革を担うDX事業をグローバルに展開。さらに、「仕掛けよう、未来。」を掲げ、オープンイノベーションによる社会価値創造を推進している。
【お話をうかがった方】
みらい価値共創部門 ビジネスイノベーション統括部 ディレクター 小図子 武弘様
※掲載されている部署名、肩書、組織名および組織体制は、すべて取材当時のものです。
NECの研究所には、世界トップレベルのAI技術が数多く蓄積されています。これら「最先端の技術」を社会実装し、新たな事業を創出するのが私たちのミッションです。そのプロセスから誕生したのが、消費財メーカーの商品企画担当者・プロモーション担当者向けのマーケティング施策立案ソリューション「BestMove(ベストムーブ)」です。
NECでは新規事業開発の推進に「ステージゲートモデル」を採用しており、多額の開発投資を伴うフェーズへ進むには、ゲート審査を突破しなければなりません。当初、私たちは別のターゲット顧客を想定して検証を重ねていましたが、審査を1カ月後に控えた土壇場で、確信に近い違和感に直面しました。
「今の方向性のままでは、大きな事業にはならないかもしれない」─現場の解像度が上がるにつれて見えてきた、避けられないリスクでした。プロジェクトリーダーとして、私は積み上げてきた戦略を白紙に戻し、大幅なピボット(方向転換)を決断しました。
審査までの残りわずか数週間で、新たなターゲット顧客を特定し、その妥当性を証明しなければならない。この極限状態のなかで活用したのがビザスクでした。
まず、商品企画やマーケティングに精通した100人超のエキスパートを対象にオンラインアンケートを実施しました。約2週間という短期間で「98%が利用意向あり」「半数以上が月額50万~100万円の支払い意向あり」という、参入すべき市場と価格妥当性を裏付ける定量データを得ることができました。
さらに、飲料や日用品メーカーのブランドマネージャーら約20人に対し、集中的にインタビューを敢行しました。現場のマーケターが抱える「自社商品を購入してくれている顧客たちが、どんな行動をしており、どんな潜在ニーズを抱えているのかがどうしても見えない」「いつも経験と勘に頼った意思決定をしてしまっている。本当はもっとしっかりとロジックを組んで再現性の高い施策立案をしたい」といった切実な痛みを把握し、私たちのAIツールがどう機能するかを直接ぶつけてみたのです。
インタビューから得られた「顧客の特徴や潜在ニーズが一発で見られるなんて画期的ですね」という評価や、「これが現実に効果を発揮するのであれば、本当に恐ろしいツールですね」といった生々しい声(熱量)が、決裁者の胸を打ち、開発投資の決定打となりました。
テキストや数値だけでは伝わりにくい「市場の温度感」を、手触り感のある形で届けられたことが、ゲート審査突破の鍵となったのです。
「BestMove」は2025年6月にローンチし、現在は複数の大手メーカーにおいて、新商品コンセプトやプロモーションの企画に活用されており、特定商品の売上が約3倍に上がる成果も出しています。土壇場でのピボットを乗り越え、情熱のすべてを注ぎ込んだこのBestMoveは私の第二の青春です。
新規事業は成功させるのがとても難しく、暗いトンネルの中を行先も分からずにさまよっているような感覚に陥りがちです。しかし「顧客の声」という羅針盤を得ることで、暗いトンネルの先に小さな光を見いだすことができるのです。その小さな光を頼りに探索を続けていくことで、「確信を持てる事業アイデア」へ昇華させることができると信じています。これからもビザスクを活用しながら新しいイノベーションを起こし続けていきたいと考えています。
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