「売れないリスク」を極小化する…BtoB新規事業のための「顧客インタビュー」3フェーズと本音を暴く質問リスト

「売れないリスク」を極小化する…BtoB新規事業のための「顧客インタビュー」3フェーズと本音を暴く質問リスト

入念に顧客インタビューを重ねたはずなのに、いざ製品をリリースするとまったく売れない。想定顧客の「素晴らしいアイデアですね」という言葉を真に受けて事業が頓挫してしまった……それは、インタビューの場で相手の「お世辞や忖度」を排除できず、現実を直視できていないからかもしれません。本記事では、端羽英子氏の著書『一次情報を「問う」 BtoB企業のためのターゲットドリブン戦略』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、BtoB新規事業の成否を左右する「仮説検証」のステップや、現場の担当者から決裁者までの生々しい本音(一次情報)をあぶり出す「シーン別の実践質問リスト」について解説します。

B to B企業の新規事業開拓に役立つ想定顧客インタビュー

顧客インタビューの3フェーズ設計と注意点
顧客インタビューの3フェーズ設計と注意点

 

【課題特定】

新規事業のアイデア創出を目的としたインタビューで最も重要なのは、顧客が抱える課題の本質を理解することです。その際には、「現在の課題」だけでなく「将来発生し得る課題」も併せて尋ねることが大切です。

 

B to B企業の課題は業務プロセスと密接に結びついており、当事者自身が真の原因を認識していない場合も少なくありません。表面的な困りごとを聞くだけでなく、その背景にある業務の流れや意思決定構造まで踏み込んで理解することが重要です。

 

例えば、業務改善型の新製品を企画しているのであれば、日次・週次・月次でどの業務にどれだけ時間を費やしているのかを具体的に確認します。さらに、時間がかかっている業務ではどのような不便や非効率が生じているのかを丁寧に掘り下げていきます。

 

課題が整理できたら、次に「これまでどのように対処してきたのか」を確認します。 現在利用しているサービス、社内で投入している人的リソース、発生しているコストなどを把握することで、改善余地の大きさが見えてきます。ここで重要なのは、金銭的コストだけを見るのではないという点です。「業務負荷」「品質リスク」「意思決定の遅れ」といった、定量化しにくいコストにも目を向ける必要があります。これまで本格的な改善に取り組んでいない場合は、「なぜそのやり方が続いているのか」「別の方法を試したことはあるのか」と問いを重ねていきます。そこから、新しい解決策を導入する際の心理的・組織的なハードルが見えてきます。

 

将来の課題については、「3年後、何に最も困っていると思いますか。現在の課題はどのように変化しているでしょうか」と、まずシンプルに問いかけます。最初、聞かれた側は突然の問いに戸惑うかもしれません。しかし、多くの場合、自身の業務がどう変化していくかについての感覚的な見通しや未来像を語ってくれるはずです。どのようなサービスが普及していそうか、制度や技術、競争環境はどう変化しているか。そうした未来志向の問いを重ねたうえで、どのような新たな課題が発生しそうかを探っていきます。

 

なお、ここでは「3年後」としましたが、業界ごとに変化のスピードは異なります。 それぞれの業界にとって「遠すぎない未来」にあたる期間を設定してください。

 

【解決策のアイデア出し】

課題を十分に深掘りしてこそ、初めて有効な解決策の仮説が生まれます。したがって、課題探索のインタビューと、解決策を議論するインタビューは分けて設計することが重要です。

 

また、解決策のヒントは必ずしも想定顧客の業界内に存在するとは限りません。むしろ、他業界にこそ応用可能な事例が眠っていることも少なくありません。

 

この段階では、課題を他業種のエキスパートにぶつけて意見をもらう、あるいは他業界の成功事例のなかに転用可能なモデルがないかを探るといった取り組みが有効です。

 

重要なのは、できるだけ多く選択肢を広げることです。このフェーズでは評価よりも発散を優先し、解決策の可能性を幅広く洗い出します。

 

【仮説検証】

いよいよ、構想した解決策の仮説を検証する段階です。

 

課題探索インタビューに協力してくれた想定顧客に対して、具体的な解決策の方向性を提示し、反応を確認します。複数の選択肢を提示し、複数の想定顧客からフィードバックを得ます。製品が完成している必要はありません。この段階で、異なる立場の顧客やエキスパートから同じ指摘が繰り返される場合は、仮説の前提そのものを見直す必要があります。

 

このフェーズで特に注意すべきなのが、ポジティブバイアスです。自社のアイデアを1つだけ提示すると、相手は無意識に「応援したい」という心理が働き、好意的なコメントに偏ることがあります。その結果、仮説は検証されるどころか、根拠なく補強されてしまいます。

 

仮説検証インタビューの目的は「賛同を集めること」ではなく、「現実を直視すること」にあります。時には耳の痛い事実や、想定外の反応が返ってくることを前提に臨む姿勢が不可欠です。

 

こうして得られた情報をもとに仮説を更新していくことで、新製品の輪郭は徐々に鮮明になります。当初は広かったコンセプトが、「この顧客の、この場面で、この価値を提供する」という一点へと収束していくのです。

 

新規顧客の理解は、データだけでは捉えきれません。現場の声、業界に精通した人々の洞察、他業種の知見、そして未来の予兆──それらをインタビューによってすくい上げ、構造化し、事業アイデアへと昇華できるかどうかが、B to B企業の新製品開発を左右します。インタビューは単なる情報収集ではなく、新たな市場を切り拓くための「戦略ツール」なのです。

 

 

次ページ顧客インタビューに使える代表的な質問リスト
一次情報を「問う」 BtoB企業のための ターゲットドリブン戦略

一次情報を「問う」 BtoB企業のための ターゲットドリブン戦略

端羽 英子

幻冬舎メディアコンサルティング

BtoB企業のビジネスリーダー必読! 「一次情報」×「二次情報」の掛け算でターゲット顧客を深く理解し、意思決定を加速させるための実践書 AIなどの情報技術が進化し、多くのビジネスパーソンは検索やデータ分析を駆使し…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧