「微妙な黒字」が出ていると、機会費用に気づきにくい
都会で農地を見かけることがあります。細々と稼いでいるのでしょうが、機会費用を考えれば赤字でしょう。その土地にビルを建てて貸せば、農業を続けるよりはるかに利益になるでしょうから。もっとも、現在が黒字だと「別の選択肢ならばどうなるか」ということに思いが至らない場合が多いので要注意です。
夫婦で細々と「パパママストア」(家族経営による零細小売店)を営んでいる場合も同様です。店を閉じて2人で働きに出れば、今より高い収入が得られるかもしれないのに、店が黒字だと「店を閉じたらどうなるか」ということに思いが至らないのです。
大企業が社内のエリートを集めて新規事業を立ち上げたとします。小幅な黒字が続いているとして、社長は「せっかくエリートを集めたのだから、もっとしっかり稼げ」と檄を飛ばすかもしれません。しかし、「その部署を解散してエリートたちに別の部署で大いに活躍してもらえば、その方が会社の利益が増えるかもしれない」という可能性に思いが至らない場合も多いでしょう。
いっそ赤字になってくれれば「他の選択肢を検討しよう」という可能性が高まるのですが、少額の黒字だとそこに思いが至らず、現状維持が続いてしまいがちなので要注意です。
拙稿『500円で買った株が800円に値上がり…どうするのが正解ですか? ベテラン経済評論家の「ズバリ回答」の中身』では、「払ってしまって戻ってこない金のことは忘れよう」という「サンクコスト」の話をしましたが、今回は「払ってもいない金のことをコストとして認識しよう」という機会費用の話でした。両方とも、意識していないと見落としてしまいそうな考え方ですが、とても重要なので、折に触れ、意識するようにしたいものですね。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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