貸借対照表から読み解く「会社の性格」

今回は、貸借対照表から「会社の性格」を読み解く方法をご紹介します。本連載では、株式会社アイ・シー・オーコンサルティング主任コンサルタントで、公認会計士・税理士の福岡雄吉郎氏の著書『決算書で面白いほど会社の数字がわかる本』(あさ出版)より一部を抜粋し、経営効率を上げるための決算書の読み方を、図解を用いて分かりやすく説明します。

創業時からの「継ぎ足し」でできている貸借対照表

貸借対照表は、左に資産が、右に資本が並びます。

 

財産を買うための資本(お金)は、他人が出したお金(他人資本)と、自分が出したお金(自己資本)の2つに分かれました。これを計算式で表すと、

 

資産=他人資本(負債)+自己資本(純資産)

 

となります。

 

貸借対照表は会社の資産(財産)と資本(お金の出所)の残高一覧表といえますが、これは、創業時からの継ぎ足しでできています。つまり、会社の歴史を表しています。

 

たとえば、ご自分の持ち物リストにある財産(自宅、自動車、洋服など)は一度にまとめて買ったものではないはずです。毎年、少しずつ買い足してきて現在があるわけです。

 

貸借対照表も同じです。貸借対照表のそれぞれの項目の内訳を見てゆくと、「なにこれ~!こんなもの、あったっけ?!」というものが、きまって登場します。洋服ダンスと同じように、貸借対照表の中身も一度、くまなく整理してほしいのです。そして、この左右を眺めていると、不思議なことに、会社の性格も見えてくるのです。

 

例えば、左側に豪華な建物、一等地にある土地、高級外車が並んでいる会社。「すごーい」と思っても真実はわかりません。その財産はどうやって買ったのでしょうか?

 

・自分のお金(自己資本)で買っているのか?(堅実)

・借金して(他人資本)買っているのか?(見栄っ張り)

 

答えは、貸借対照表の右側にあります。

 

創業時からコツコツ稼ぎがある、ムダ遣いをしない会社には、自分のお金(自己資本)がたくさんあります。

 

反対に、稼ぎが少ないわりに、見栄っ張りという会社なら、他人のお金(他人資本)が目立つのです。所有欲が強ければ、左側にやたら建物や土地が多いのです。

 

貸借対照表をみれば、その会社の性格が、よくわかるのです。損益計算書だけを見ていては、こうしたことは、決してわからないのです。

 

【図表1】貸借対照表で性格まで見えてくる①

 

【図表2】貸借対照表で性格まで見えてくる②

「自己資本が大きすぎる」会社が抱える悩みとは?

他人資本(負債)が、資産よりも大きい場合があります。

 

個人でいえば、カードの支払や借入返済に追われている状態で、行く末は自己破産です。

 

会社の決算書でも、ときどき、こういう会社をみかけます。資産よりも負債が大きい状態を「債務超過」といいます。“債務超過”の会社は、倒産危険度がとても高いです。会社も個人も、「他力本願」では、つぶれてしまいます。

 

【図表3】貸借対照表で性格まで見えてくる③

 

いっぽうで、自己資本が大きすぎる会社にも、悩みがあります。こういう会社は、たいてい、たくさんの現金を持っています。多額の現金の使い道で悩むのです。もし、上場していれば、株主から「オレたちにもっと配当しろ!」と要求されるのです。

 

69ページ(※書籍参照)でも見たように、会社が成長するには、もうけたお金をヒトやモノに投資することが必要になってきます。人材、最新設備、ITシステム、研究開発、成長分野の事業や会社など……。長期的に見れば、お金はため込みすぎても、よくはないのです。

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    株式会社アイ・シー・オーコンサルティング 主任コンサルタント
    公認会計士・税理士

    名古屋大学卒業後、中堅監査法人へ入社。年商数億円から1000億円を超える企業まで、さまざまな業種の監査業務に従事。2012年、アイ・シー・オーコンサルティング入社。中小、中堅企業のお金を増やすための財務改善指導(オフバランス、資金繰り改善、投資計画策定)、お金を守るための内部監査業務に従事。最近は、オーナー経営者の高額退職金の支給や株式相続などの事業承継、M&A(会社売買)の指導で全国を奔走している。

    著者紹介

    株式会社アイ・シー・オーコンサルティング 会長

    昭和17年大阪生まれ。早稲田大学卒。昭和59年大手コンサルティング会社を経て、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングを設立。企業再建の「名外科医」として、赤字会社の中に入り込み、社長や役員を叱りとばしながら思い切った手を果敢に打って短期間に収益を回復させる。経営指導暦は40年を超え、これまで400社以上を直接指導。オーナー社長のクセを知り尽くし、1社も潰さず、一部上場はじめ株式公開させた企業も十数社にのぼる。

    著書:『儲かるようにすべてを変える』『カネ回りのよい経営』『後継者の鉄則』(いずれも日本経営合理化協会出版局)、『社内埋蔵金をお金にする知恵』(中経出版)『儲かる会社をつくるには、赤字決算にしなさい』(ダイヤモンド出版)など。

    著者紹介

    連載「貸借対照表」を分析して社内の埋蔵金を発掘する方法

    本連載は、2016年7月9日刊行の書籍『決算書で面白いほど会社の数字がわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

    決算書で面白いほど 会社の数字がわかる本

    決算書で面白いほど 会社の数字がわかる本

    井上 和弘 福岡 雄吉郎

    あさ出版

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