(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の幸せは、金銭面だけで決まるものではありません。孫に囲まれ、夫婦で旅行に出かけ、一定の貯蓄もある。周囲から見れば恵まれた老後に見えても、本人たちが満たされているとは限りません。家族との関わりが多いほど、喜びだけでなく、期待や負担も増えていくことがあります。

「幸せな老後」のはずが…孫と旅行に追われる毎日

昭夫さん(仮名・72歳)と妻の美代子さん(仮名・70歳)は、夫婦で年金月26万円ほどを受け取りながら暮らしています。貯金は約3,800万円。住宅ローンは完済済みで、子ども2人も独立しています。

 

周囲からは、よくこう言われました。

 

「お孫さんもいて、旅行にも行けて、理想の老後ですね」

 

実際、夫婦には4人の孫がいます。誕生日、入学祝い、七五三、運動会、発表会。予定はいつもにぎやかでした。長男夫婦と長女夫婦はどちらも近くに住んでおり、週末になると孫たちが遊びに来ます。

 

「じいじ、どこか連れて行って」

「ばあば、美味しいものが食べたい」

 

そう言われると、昭夫さんも美代子さんも断れませんでした。

 

最初はうれしかったのです。子どもたちが独立したあと、家の中が静かになっていた夫婦にとって、孫の声は何よりの楽しみでした。動物園に連れて行き、外食をし、おもちゃを買う。孫が喜ぶ顔を見るたび、夫婦は「まだ自分たちにも役割がある」と感じていました。

 

夫婦だけの旅行も続けていました。春は温泉、秋は紅葉、年に一度は少し遠方へ。お金に困っているわけではなく、体力もまだありました。

 

それでも、ある頃から夫婦の会話にはため息が混じるようになりました。

 

「今月も出費が多かったね」

 

美代子さんが家計簿を見ながら言いました。

 

孫4人への誕生日祝い、外食代、交通費、習い事の発表会の差し入れ。さらに、長女からは「少しだけ」と学習塾代の援助を頼まれました。長男夫婦からも、住宅ローンや物価高で家計が苦しいという話を聞かされます。

 

「助けられるうちは助けたい」

 

昭夫さんはそう言いました。しかし、その言葉の裏には疲れもありました。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円で、平均では毎月約4.2万円の不足が生じています。昭夫さん夫婦の年金月26万円は平均的な消費支出に近い水準で、貯金3,800万円があるとはいえ、孫や子ども世帯への支出が重なれば、取り崩しは避けられません。

 

問題は、単にお金が減ることだけではありませんでした。

 

孫の予定に合わせて旅行の日程を変え、子ども世帯の都合で週末が埋まる。夫婦の楽しみだったはずの外出も、いつしか「孫をどこに連れて行くか」を考える時間になっていました。

 

「楽しいはずなのに、帰ってくるとぐったりするのよね」

 

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