幸せ絶頂から一転…「想定外の地獄」
完成した新居での暮らしは、まさに幸せの絶頂からスタートしました。毎日笑い声が響き、一雄さんも志保さんも充実感を味わっていました。しかし、そんな歓喜の生活は長くは続きませんでした。
最大の誤算は、生活リズムの違いでした。同居するまで知りませんでしたが、娘一家は夜型で、孫も夜中までテレビやゲームに夢中です。「早く寝かさないから、朝も起きないんだろう」と注意すると、娘からは「うちにはうちのペースがあるの」と一言。
さらに、以前は「週末の楽しかったイベント」だった食事が、ただの負担に変わりました。妻の志保さんが朝晩の食事の準備までこなし、掃除や洗濯も担当。疲れ果てていきました。
プライベートの境界線を曖昧にしていたツケが一気に回ってきました。また、あんなに喜んでいた孫との同居ですが、上の子は思春期に入り、冷たい態度を取られることも増えました。
およそ3年後。一雄さんと志保さんは同居を心の底から後悔するようになり、ついに娘夫婦に内緒で売却の相談をすることに。「家を売って、自分たちは小さな中古マンションにでも移ろう」と考えたのです。
しかし、不動産会社から告げられた査定結果は、あまりにも残酷なものでした。
「二世帯住宅、特にすべての設備を共有する『融合型』は、なかなか売れないんですよ。立地を考えると、もし売れても3,000万円程度でしょう」
つまり、5,500万円で建てた家が、わずか3年で3,000万円の価値にまで暴落してしまうというのです。この家を3,000万円で売却しても、そのお金はすべて娘婿の住宅ローン(残り約3,000万円)の返済に消えてしまい、一雄さんの手元には一円も戻ってきません。
「別々で暮らしていれば、ずっと仲良くいられたのに。こんなことになるなんて……」
一雄さん夫婦は後悔のなか、今も息を潜めるようにして我慢の同居生活を続けています。

