「少し働く」がかえって難しいという現実
完全に社会から孤立することに危機感を覚えた佐藤さんは、リハビリを兼ねて「少しだけ働こう(=サイドFIREへの移行)」と考えます。 しかし、次は、40代のリアルな壁にぶち当たりました。
「少し働くって、けっこう難しいんですよ。“アルバイト程度”といっても、若者に混ざって40過ぎのおじさんが働くのは気が引けます。スーツを着て会社員しかやってこなかったから、逆にハードルが高かった」
結果として佐藤さんは、転職サイトを通じて正社員に再就職しました。役職も肩書きもなく、年収は前職の半分以下の450万円。ですが、佐藤さんは満足げです。
「平社員は、むしろ願ったり叶ったり。会社に貢献しつつも、影は薄く、ほどほどに。目標は、変に活躍して重たい役職を付けられないことです(笑)」
冷静な人が「会社員を辞めない」本当の理由
厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)の概況(令和6年)」によると、現在の仕事や職業生活に関することで「強いストレス」を感じる事柄がある労働者の割合は68.3%。30代と40代がともに73%台と、特に高い割合を占めています。
強いストレスの内容は「仕事の量(43.2%)」が最も多く、続いて「仕事の失敗、責任の発生等(36.2%)」が続いています。ここからは、30代・40代の多くが、仕事の量と重圧を同時に抱えているという実態が読み取れます。
こうした中で、FIREという言葉に憧れ、必死に資産形成に励む人もいます。ただ、佐藤さんの事例は「お金だけあっても人間は幸せになれない」という現実を物語っています。
人間には、適度な「規則正しい生活」「社会的なつながり」「他者からの承認」が必要です。それらを最も手軽に、かつお金をもらいながらパッケージで提供してくれるのが、佐藤さんにとっては「会社員」という身分だったのです。
もちろん、自分自身でそうした環境を作り出すことができる人もいるでしょう。ただ、冷静な億超え投資家に「でも、会社員は辞めません」と語る人が多い理由。それは、会社に依存するためではなく、「会社を自分の健康と暇つぶしのために『利用』している」からなのかもしれません。
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