(※写真はイメージです/PIXTA)

令和8年になって、文化庁がようやく重い腰を上げた。警察庁、国税庁、法務省などの関係省庁が一堂に会する「不活動宗教法人対策会議」が始まり、活動実態のない宗教法人が脱税やマネーローンダリングなどの犯罪に悪用されることを防ぐため、縦割り行政の壁を越えた実態調査に乗り出している。法人の解散命令も視野に入れた厳格な対応が検討されているが、すでに第三者の手に渡った宗教法人も少なくない。問題の解決には、より迅速な対応が求められている。

法務局の「みなし解散制度」が機能しない

ところが宗教法人では、代表役員の任期が「終身制」の場合もあって、法務局が役員の就任、退任を正しく把握できず、休眠状態になって放置される法人が存在してしまうことになる。

 

20年も経ってから時計の針を巻き戻す議事録を作成すると、動きがなかった宗教法人が、ある日突然、縁もゆかりもない遠方の人物に代表役員が変更され、主たる事務所も変更されて登記簿が動き出す。

 

不自然さは一目瞭然なのだが、法務局は形式上の書類が整っていれば手続きを拒めない。

 

また、筆者が相談を受けた別の案件では、代表役員や主たる事務所が2年ごとに目まぐるしく変更されていた。

 

本来、寺社は地域に根差して布教活動を行う存在であり、代表役員の変更は死亡や世代交代など限られた場合にとどまる。ましてや主たる事務所の変更は布教活動を一からやり直すことになるため、伝統的な宗教法人では考えられない登記簿の動きといえる。

任意調査では手を出せない国税

いかに不自然な役員交代や主たる事務所の変更があっても、所轄官庁の文化庁は信教の自由を尊重する立場から、容易に宗教法人格を否認することはできないだろう。

 

そして文化庁が宗教法人として認めている限り、国税庁は公益法人等として優遇税制を適用せざるを得ない。

 

しかも、年間の喜捨金(寄付金)が8,000万円以下であれば、税務署への収支計算書の提出義務がなく、国税当局が進めるご自慢のAI選定のアンテナでは拾い上げられないため、まさにノーマーク。

 

すでに第三者の手に渡った宗教法人も相当数あるとみられ、様々な方法で宗教活動の実態があるように装って優遇税制を享受しているケースもあるようだ。

 

国税組織のなかで縦割り行政の壁に切り込めるのは、強制調査権限をもつマルサ(国税局査察部)以外にはないのだが、信教の自由の壁を打ち破るための証拠を集めるのは容易ではない。

 

まさに、縦割り行政のエアポケットに入り込んで長年放置されてきた問題だ。

 

宗教法人は、宗教活動の実態が偽装されていたとしても、信教の自由のもとでは解明が難しい。その一方で困窮した寺社が売買され、脱税やマネーローンダリング、不動産売買益の非収益化など様々な悪用事例があるようだが、表面化するのは氷山の一角に過ぎない。
宗教法人法や税法の改正を含め、文化庁が主催する新たな会議の動きに期待したい。

 

上田 二郎

元国税査察官/税理士

 

 

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